妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 一週間前の散歩中、「ユリウス様の周囲の光はなんだ」と尋ねてきた中年男性にリュオンは「日焼け防止魔法です」と適当なことを言い、男性は疑問が解消されたことに満足して立ち去った。

 この事例が証明している通り、相手が一般人であればかかっている魔法の種類などわからない。

 相手が魔女であっても同じだ。

 変身魔法は禁止魔法。真っ当な魔女ならそもそも知識として習得する機会がない。
 ましてや変身魔法の解除魔法など知るはずがなかった。

 私の前を歩いているノエル様はふと、武器の具合を確かめるように腹部に触れた。

 この街では治安維持のために兵士以外の帯剣は禁止されており、外から来た人間は街の入り口で武器を預けることになる。

 もちろん街中に暮らす人間も例外ではなく、ノエル様もリュオンも無手だった。

 でも、それは見かけだけの話。

 リュオンは懐に護身用の短剣を。
 ノエル様は羽織った外套の下に投擲用のスローイングナイフを何本か隠し持っている。