妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「言うまでもないとは思うが、もしイノーラの手勢に大魔導師級の魔女がいた場合、セラが捕まった時点でこちらの敗北は確定だ」
「はい。心得ています」

 バートラム様に口の堅い魔女――先代様に仕えていたという優しそうな老婆だった――を屋敷に呼んでもらって実験した結果、セラの魔法の対象となるのは一人だけということがわかった。

 セラは自分の意思で対象を選ぶことはできず、自動的に、セラに近い場所にいる魔女の魔力が増幅される。

 でも、最も優先されるのは『セラに近い場所にいる魔女』ではなく『セラに触れた魔女』。

 先に誰かがセラに触った場合、次に触った魔女は対象外だ。

 セラを捕まえた魔女がイノーラなら全力を出せば渡り合えるだろう。

 だが、イノーラの手勢におれに匹敵する『大魔導師』級の魔女がいて、セラがその魔女の魔力を跳ね上げたなら、セラの奪還は不可能だ。

 《《奥の手を使えば》》叶うかもしれないが、セラは怒り狂うだろう。あるいは泣き喚くかもしれない。

 だから、いまおれがすべきことは余計なことを考えず、セラを全力で守ること。
 そしてそれはおれの望むことでもあった。