妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

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 ユリウスたちと一緒に赴いた本館のサロンでは伯爵と伯爵夫人が座っていた。

 二人ともきちんと身なりを整えていて、茶色のドレスを着た伯爵夫人は顔に薄化粧を施している。

 シャンデリアが吊り下がったサロンでは大きな花瓶に色とりどりの花が活けられていて、鼻孔をふわりと花の香りがくすぐった。

 茶色と金の二色で構成された壁紙と調和する品の良い調度。
 壁に飾られているのは風景画と歌劇の一場面を模した絵。

 大きな窓からは雲が浮かぶ青空と美しく手入れされた庭が見えた。

「二人とも、おはよう」
「おはようございます、父上、母上」

 ユリウスたちが両親と挨拶を交わし、続いておれも挨拶した。
 既に人払いを済ませているらしく、広々としたサロンには伯爵夫妻の姿しかない。

「二人とも座りなさい。リュオンはその後ろよ」
「はい」
 指示通りにユリウスとノエルが向かいの長椅子に着席し、おれは長椅子の後ろに立つ。

 斜め後ろから見るユリウスの顔には緊張の色があった。
 朝から、それも三人ともが呼び出されるとなるとただ事ではない。