妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「――なあセラ。おれはこれから先、何があっても命をかけてセラを守ると誓うよ」

 それはとうの昔に心に決めた、誓いの言葉。

 自暴自棄になって人生を投げ出さずに済んだのは、他の誰でもなく、彼女のおかげだった。

 彼女のためなら何だってする。その覚悟でおれは王都へ行った。

 さすがに国軍でも手を焼く天災級の魔獣三頭と戦わされる羽目になるとは思わなかったが、それで彼女の身の安全が保障されたならば、全身に負った怪我も勲章だ。

「い、いきなり何なの。もしかして寝ぼけているの? 命をかけられても困るわ。生きてちょうだい」
 顔を赤らめ、混乱しながらもセラはそう言った。

「おれが死んだら嫌?」
「当たり前でしょう! 二度とそんなこと言わないで!」
 彼女は本気で怒ったようだった。

 しかしそれも嬉しい。恋とは人を馬鹿にするものだ。

 口移しでもいいよ。昨日そう言ったときは本当に冗談のつもりだった。

 でも彼女は至って真面目に検討してくれた。いまもろくに抵抗することなくおれの腕の中に閉じ込められている。

 おれをぶん殴ってでも逃げようとしないのは、少しは脈ありと思っていいのだろうか。

 彼女を解放するまであと三秒。
 あと三秒以内に、緩んだ頬を引き締めなければならない。