妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 目を開くと、美しく成長した彼女がおれの部屋にいた。

「リュオン。起きた?」

 椅子に座り、軽く上体を乗り出して、彼女は寝台に横たわるおれを覗き込んでいる。

 あれから八年が経つというのに、眉尻を下げ、心配そうにこちらを見るその表情はまるで変わっていなかった。

「喉は乾いてない? 水を飲む? 今日はネクターさんに教えてもらってリゾットを作ったのよ。食べられそうかしら? それとも、すりおろしたリンゴのほうがいい?」

 おれは寝台に横たわったまま、無言で彼女を手招きした。
 もっと近くに寄ってくれと仕草で伝える。

「?」
 不思議そうな顔をしながら彼女が上体を近づけてきたので、おれは両手を伸ばした。

 左腕に激痛が走るのも構わず彼女を捕まえ、胸に抱く。

「!!? なななな、何をするの!?」

 顔を真っ赤にして慌てふためく彼女は大変可愛らしい。ずっとこのまま抱きしめていたくなるほど。

 でもあまり調子に乗って怯えられたり警戒されるのも嫌なので解放するしかない。

 悪ふざけで済まされるのは数秒だけだ。残念なことに。