妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 やがて、おれを背負った彼女が辿り着いたのは王都の一角にある診療所。

 彼女はおれが治癒魔法でも治せない怪我を負っているか、あるいは重病人だと勘違いしたらしい。

 おれを背中から下ろした後、彼女は診療所にいた医者にまっすぐ身体を向けて、おれのことを頼むように深々と頭を下げた。

「×××」
 彼女は診療所の出入り口で立ち止まり、おれを振り返って何か言った。

 さようなら。多分そう言ったのだろう。

 おれはとっさに彼女の手を掴んだ。
 たとえ言葉が通じなくとも、これだけは伝えなければならなかった。

「ありがとう、セレスティア」

 名前を呼ぶと、彼女は驚いた顔をして。

 それから、嬉しそうに笑った。

「――――」
 花が開くような笑顔に心を奪われた。一瞬で虜になってしまった。

 ――いつか彼女の話す外国語を学んで会いに行こう。
 瞬間的にそう決めた。

 死んでも良いと思っていたのに、生きる意味と目的ができた。

 元気になったら出頭して犯した罪を償おう。

 そして、正々堂々と彼女に会って、おれがどれだけ救われたかを伝えるんだ――。