妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「××××。××××」
 何を言われても理解は不能。
 ただ黙っていると、少女は苦しそうな呼吸の狭間で言った。

「セレスティア。セレスティア・ブランシュ」

 どうやらそれが彼女の名前らしい。
 家名を持っているということは、平民ではなく、どこかの貴族の令嬢。

 上品な身なりが示す通り、自分とはそもそも住む世界が違う人間だった。

 しかし、なんでまた、他国のお偉いお貴族様の御令嬢がこんなことをしているのか。

 おれを助けて彼女に何の得があるのか。

 全くわからず考え込んでいると、彼女はちらちらおれを見た。

「リュオン」
 何やら期待されているようだったので、仕方なく名乗る。

「リオン?」
 惜しい。微妙に違う。
 リオンのほうが覚えやすくて発音もしやすいと思うが、文句ならこの名前をつけた奴に言って欲しい。

「違う。リュオン。リュ・オ・ン」
「リ、リィオ、リュ。リュオン」
「そう」
 最後の発音は完璧だった。