妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「×××? ××××」
 彼女が振り返って何か言った。

 疲労困憊している証拠に、彼女の額には汗が滲み、おれの足を抱える細い腕は震えている。

 とうに限界を超えているのは見ればわかった。

「いや、だから、下ろせって。おれがお前みたいな金持ちの子どもに見えるか? おれは何も持ってない。親切にされても何も返せないんだよ。おれは犯罪者だ。優しくされる価値もない」

「××××!」
 背中から下りようと身じろぎしたら注意された。
 そしてまた少女はおれを背負い直す。大変そうに。震える腕で。

「…………」
 彼女の荒い呼吸音を聞いていると、これ以上の負担をかけるのは申し訳ないような気がしてきたので、おれは観念しておとなしくすることにした。

 元より暴れるだけの体力はもうない。
 さっき身じろぎしただけで精いっぱいだった。