妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

   ◆   ◆   ◆

 ――雪が降りそうなほど寒い夜だったことを覚えている。

 背中を預けた壁も地面も氷のように冷たかったけれど、深刻な栄養不足に陥った身体にはもう動くだけの気力も体力も残っていなかった。

 意識が朦朧とする。
 遠からず自分は死ぬ。実感としてそれがわかる。

 でも、だからなんだというのか――

 貧相な子どもが一人死んだところで世界は何も変わらない。
 自分などいないほうがよほど世界はうまく綺麗に回るだろう。

 何しろ放火の罪を犯しておきながら、罪を償うこともせずに逃げた犯罪者なのだから。

 通りすがりの人間は路地裏に蹲っている自分を見なかったことにして歩いて行く。

 中には露骨に顔をしかめる人間もいたし、何が可笑しいのか指を指して笑う人間もいた。

 でも、みんないなくなった。

 暗い路地裏に、いまは一人だ。どうしようもなく、独りだ。