妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「でも、やっぱりお兄様とは呼ばないでくれ。不快なわけではないが、単純に気恥ずかしい」
「わかりました。引き続きユリウス様と呼ばせていただきます」
「いや、ユーリでいい。そう呼ぶことを許す」
 照れたのか、ユリウス様はそっぽ向いた。

「ありがとうございます。それではいまからユーリ様と呼ばせていただきますね」
 私は満面の笑みを浮かべてから、ユリウス様の爪を見た。

「ところでユーリ様。さっきから思っていたんですけれど、爪が長いですね。爪が長いせいでスカーフが引っ掛かって階段から落ちてしまったのでしょう。この家に猫用の爪切りはありますか? なければ私が買いに――」

「やめろ、一人で出歩くな。セラを一人で出かけさせて万が一のことがあれば、俺がリュオンに殺される」
 ユリウス様は身体を起こしてまで言った。

「それは大げさですよ。買い物くらい一人で行けま……いえ、わかりました」
 射抜くような鋭い視線を受けては引き下がるしかなかった。

「ノエル様に同行をお願いすることにします。……ふふ」
 私は思わず笑っていた。