妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「す、すみません。聞かないほうが良かったですね。忘れてください」

「……いや。セラが興味本位で聞いているわけではないのはわかっている。あれから三か月……もう四か月近く経つんだ。いい加減逃げてばかりいないで、現実に向き合わなければいけないのも、頭ではちゃんとわかっている。わかってはいるんだが……」
 ユリウス様は口をつぐんだ。

  頭でわかっていても、どうしても感情がついていかないのだろう。

 私も妹の結婚式では周りから嘲笑された。
 婚約者を奪われたことそれ自体より、周りの視線や陰口のほうが遥かに堪えた。

 自分が惨めな存在なのだと思い知らされ、世界中の人々から嗤《わら》われているような気がした。

 でも、私が味わった絶望よりもユリウス様の絶望は遥かに深い。

 ユリウス様とは知り合ってまだ半月程度。
 それでも彼の人となりくらいはわかる。

 政略結婚で、生まれる前から決まっていた婚約者とはいえ、ユリウス様はクロード王子のように浮気をするような人間ではない。

 それこそ一途に、真摯に、婚約者を愛したはずだ。

 ユリウス様は生涯を共に生きると決めた花嫁に、よりによって結婚式当日に逃げられた。