妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「……だが、俺が猫になる度にあいつに手間をかけさせるのは事実だ。俺に魔法をかけた魔女ドロシーを見つけ出せれば良いんだが、ドロシーは長いこと行方知れずだ。父上がどれだけ手を尽くしてくださっても見つからないとなると、この国にはもういないのだろう。元より神出鬼没で有名な魔女だからな」

 ドロシー・ユーグレース。倫理も道徳もまるで無視して、気に入った人間にはとびきりの幸福を、気に入らない人間にはとびきりの災厄をもたらすという魔女。

 遠く離れたレアノールでも『誰が魔女の中で最強か?』という議論ではまず真っ先にその名が挙がっていた。

 同じ『大魔導師』の称号を持つリュオンも、もし人々の間で語り継がれる嘘のような伝承が真実なら、もしドロシーと戦うことになったら勝てないだろうと言っていた。

「……ユリウス様は結婚式までは安定して人間でいられたんですよね?」

 私が尋ねると、苦い記憶を思い出させてしまったらしく、ユリウス様は黙り込んだ。