妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「ユリウス様!?」
 私はユリウス様に駆け寄り、妙に温かいその身体を抱き上げた。

 ざっと見た限りでは外傷はない。
 でも、目に見えない内臓を痛めている可能性は否定できない。

 階段には赤いスカーフが落ちていた。
 察するに、階段を上る途中でスカーフを踏んづけてしまって落ちたのだろうか?

「ユリウス様!!」
 私は半泣きで黒猫の背中を叩いた。

「みっ!!」
 目を開けたユリウス様は私を見るなり猫らしく鳴いて、ぶわっと全身の毛を逆立てて尻尾を膨らませ、じたばたと暴れた。

 この反応を見る限り元気そうだ。
 恐らくは軽い脳震盪を起こしていたのだろう。

 ほっとして床に下ろすと、ユリウス様は壁際まで全力疾走し、身体を壁に押し付けた状態で前屈みになり、じーっと私を見上げた。

 あれほどまでに警戒心をむき出しにしているのは寝起きで私が超至近距離にいて驚いたからだろう。最近ではあそこまで過剰反応されることはない。