妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 何故自分のためにそこまでするのかと尋ねると、伯爵は「大人が困っている子どもを助けるのに理由が必要か?」と問い返した。

 リュオンは信じられない思いだったという。
 世の中にはこんな大人がいるのかと感動し、世界がひっくり返ったような気分だった、と。

 それからリュオンは伯爵夫妻の支援を受けて魔法学園に通い、たった一年で難解な古文書を読み解き、ユリウス様の猫化の解除に成功した。

 首席で魔法学園を卒業したリュオンには無限の可能性があったけれど、彼は数多の誘いを断って伯爵夫妻に仕えることを選んだ。

 それから数年が経って彼は『大魔導師』となり、貴族の仲間入りを果たした。
 ロドリーでは『大魔導師』になると家名を持つことが許され、一代限りの貴族となることができるのだ。

 リュオンはリュオン・クルーゼ男爵となり、それからも変わらずラスファルの街を守り続けている。

 エンドリーネ伯爵夫妻はおれに新しい人生を与えてくれた恩人だし、何よりここは春の陽だまりみたいに居心地の良い場所だから。

 リュオンは話をそう締めくくった。

 何も言えずに彼を見つめていると、長い話を終えて疲れたらしく、リュオンはそのうち目を閉じて寝息を立て始めた。

 だから私はそっと部屋を抜け出したのだ。