妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

 ――むしろおれは嬉しいよ。セラはいつも他人の顔色を窺って、微笑んでばかりいるからな。おれにだけ怒りの感情を表すのはおれを信頼して甘えてる証拠だ。もっと怒ってくれていいよ?

 まさかそんなことを言われるとは思わず、面喰っていると、リュオンは「それよりリンゴ」と何事もなかったかのように促した。

 私はすりおろしたリンゴを彼の口へと運び、食べ終わったリュオンに眠るよう促した。

 リュオンは素直に身体を横たえた。

 でも、すぐには眠ろうとせず、熱に潤んだ瞳で、なんだか嬉しそうに私を見た。

 熱と痛みに苛まれて苦しいはずなのに、私は彼に暴言を吐いたのに、どうしてそんなに嬉しそうなのか聞くと、彼は「いまここにセラがいるのが信じられない」と答え、初めて自分の過去を打ち明けてくれた。

 彼は孤児で、両親の顔も覚えていない。
 書類上ではユリウス様と同じ十九歳の彼だが、本当の年齢は誰にもわからない。

 物心ついたときには王都の貧しい孤児院で暮らしていた。

 非常に珍しい男性の魔女である彼に孤児院の子どもたちは冷たく、事なかれ主義の大人たちは誰も庇ってくれなかった。

 私はレアノールの魔法学校で魔法が使えず虐められた。
 彼はその逆で、魔法が使える魔女だから虐められた。