妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「あ、あーん……」
 こう言いながらリュオンに食べさせるのは浮かれた恋人同士みたいで物凄く恥ずかしい。

「いや、いちいち言わなくても近づけてくれたら食べるよ?」
 真顔で言われて、私の羞恥は限界に達した。

「も! もももうっ、意外と元気そうだしっ、自分で食べて貰えないかしら!!」
 私は顔を真っ赤にしてスプーンを皿ごと突き出した。

「え、左腕を動かせと?」
「そ、それはそうよね、ごめんなさい……」
 私は項垂れつつ皿を手元に引き戻した。

「スプーンを運ぶのが面倒なら口移しでもいいよ?」

「えぇっ!!?」
 自分でもかつて聞いたことがないほどの素っ頓狂な声が口から洩れ、私は愕然とリュオンを見つめた。

 リュオンは私の反応こそが意外だったらしく、目をぱちくりしている。

「そ、それは――い、いくらリュオンが怪我をしたのは私のせいだとはいえ、さ、さすがに口移しはちょっと――も、物事には順序というものがですね? いや何の順序なの? ええと、だから……」 

 持っていた皿をサイドテーブルに置いて胸の前で手を組み合わせ、意味もなく指を揉みながら視線を彷徨わせる。