妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

「…………」
 横一列に並び、離れた的に矢を射る訓練をしている兵士たちを遠目に見ていた私は、開け放った窓の外から室内へと視線を引き戻した。

 椅子に座る私の前には寝台があり、額に濡れた布を乗せたリュオンが横たわっている。

 リュオンは眠っていて意識がない。
 少し前まで魘されていたけれど、いまは静かだ。

 彼の顔に滲む汗を白い綿布で拭った後、私は彼の身体にかけられた掛布をめくりあげて左腕の様子を確かめた。

 昨日ほどではないが包帯に血が滲んでいるのを見て、サイドテーブルの上の救急箱を開ける。

 包帯を取り外し、怪我を目の当たりにすると涙が出そうだ。
 歯を食いしばって泣くのを堪え、小さく切った長方形の綿布に回復薬《ポーション》を含ませ、傷に優しく数回押し当てる。

 軟膏を塗って、早く治るように祈りながら包帯を巻き、彼の左腕を寝台に戻そうとしたとき――

「……セラ?」
 掠れた声が聞こえ、リュオンの左手の指先が微かに動いた。

 はっとして顔を向ければ、リュオンがぼんやりした眼差しでこちらを見ていた。
 熱のせいで頬は赤く、瞳が潤んでいる。

「ごめんなさい、起こしてしまったわね。でもちょうどいいわ、喉は乾いてない? 水を飲む?」
「……飲む」

 私は水差しを取り上げてコップに水を注いだ。

 それから、中腰になってリュオンの上体を持ち上げ、彼が身を起こす手伝いをする。

 自力で上体を支えていられないほど弱った彼を見ていると、また涙が込み上げてきた。