時刻は夜の九時になるところ。
昼頃まで降っていた雨が止んでいるかわりに、隙間風がヒュウヒュウ吹いて、真っ暗な校舎を揺らしているような気がする。
実際は、いくらこの建物が古い木造だからといって、そんな風で揺らぐほど弱い造りじゃない。
何せここは、全国の天才秀才が集う名門校、虹代中学校。
――の、旧校舎、だけど。
(うーん、暗い……)
普段授業を受けている新校舎と違って、少し離れたところに建っているこの旧校舎は古く、電気もつかない。
持ってきた懐中電灯では光量が足りなかったみたいで先がよく見えなかった。
それでも、ギシギシ鳴る廊下を踏みしめながら奥へ、奥へと進む。
今から確認するのは、七不思議の一つ、「旧校舎で踊る火の玉」。
旧校舎のどこなのかはっきりしないから、手当たり次第に教室の扉を開けてみるしかない。
手前から開けて、ゆっくりと中を照らす。
……誰もいない。何もない。
(ふう……)
小さく息をついて、次の教室へ。
同じように確認するけど、変わり映えはしない。
(……やっぱり、ウワサはウワサか?)
それなら、それでいい。
早く済ませてしまおうと、次の教室を開け――。
「……ん?」
教室の中央にポツンと置かれているものがある。
ユラユラと穏やかに揺れるその灯り。
火の玉というよりそれは、
ロウソク?
「ばっ……!」
バカ! こんなところでロウソクなんて放置してたら火事になる……!
思わず中に踏み込むと、ゴツリ。
背後から背中に固いものが当てられた。
体が硬直する。
「手をあげろ」
思いがけず涼やかな声だった。
どこか混乱しながら、僕はそろりと両手をあげる。
そうしてゆっくり、ぎこちなく振り返ると。
「バン」
癪なほど顔の整った男子が、親指と人差し指で銃の形を作って笑っていた。
