五感を研ぎ澄ませ! ~旧校舎で踊る火の玉事件~

 外がすっかり暗くなったころ。

「蒼真!」

 警察に話し終えた僕を、お母さんが迎えに来てくれた。
 久しぶりに会うお母さんは少し痩せていたけど、でも、顔色は悪くない。
 なんてよく観察する前に、ぎゅっと抱きしめられる。

「もう。心配したんだからね!」
「ごめんなさい……」
「ケガはない?」
「うん」

 うなずくと、そう、とやわらかに返された。
 なんだか恥ずかしい。
 警察にはバラバラに説明してたから、この場に天土くんたちがいないことが救いだった。

「今日は寮じゃなくて一緒に帰ろ? ご飯も作ろっか。何食べたい?」
「あの……」
「うん? ……あ、メガネは? もしかして壊れちゃった?」
「違うよ。大丈夫、持ってる」

 そういえばメガネを外したままだった。
 ポケットから取り出してみせると、お母さんはほんの少し目を丸くした。

「自分で外したの?」
「うん」
「……大丈夫?」
「うん」
「そっか」

 お母さんは嬉しそうに笑う。

 このメガネはお母さんが買ってくれたものだ。
 高かったろうに、自分の目を疎んでいた僕が少しでも楽になるように、って。

 そんな僕が、自分の意思でメガネをかけていなかった。
 その意味を、お母さんは何となく察したのかもしれない。

 ……僕みたいな目がなくたって、お母さんにはわかっちゃうものなんだよな。
 だから僕はお母さんには勝てないなと思う。

「でも……」

 お母さんは一転して心配そうな顔になった。

「こんな危ない目にあって……。蒼真、無理にここに通う必要はないのよ? 蒼真ならどこの学校でも頑張れると思うし」
「え」
「転校したいなら手続きするからね」

 そう言ってお母さんは頭を撫でてきた。

 ……確かに僕は、かなり背伸びをしてこの学校に入った。
 入ってからも、クラスで浮きながら、ひたすら勉強に明け暮れている。
 それもこれも、将来、お母さんを楽にさせたい、お金持ちになりたいという理由で。

 だけどこんな目にあってまで、頑張ることだろうか?
 違う学校でだって勉強はできるし、どの学校でだろうと、頑張れば良い就職は目指せるんじゃないか?
 この学校にこだわる理由なんて……。

「……僕は――」