五感を研ぎ澄ませ! ~旧校舎で踊る火の玉事件~

 急にとんでもないことを言われて、僕は頭が真っ白になってしまった。

 バクダン?
 今、爆弾って言った?
 爆弾ってあの……爆発する、あの爆弾?

「本当はやりたくなかったんだがね。私の話を聞いてもらえなかったのだから仕方ない。こちらも話す以外の方法で訴えなくては」
「……ウソだろ! 爆弾なんて簡単に手に入るモンじゃねえし!」
「でもさ、手製の爆弾を使った事件って、ボク、聞いたことあるよ」
「今はいろいろ調べられるしねぇ……しかも池上先生って理科担当だし、そういうの得意そう」
「マジかよ」

 火和くんたちがヒソヒソと話している。
 天土くんは難しい顔をして池上先生を見つめたまま。

「冗談だと思うか?」

 池上先生は笑って、白衣のポケットから一枚の紙を取り出した。
 広げてこちらに見せてくる。
 ――何らかの……いや、爆弾の図面だった。

 ゾクッと全身に冷たいものが走る。
 先生は本気だ。

「爆発まであと三十分というところかな。巻き込まれたくなければ、君たちも逃げるといい」
「っ……天土くん!」
「蒼真。先生の顔をよく見てて」
「え?」

 囁かれ、とっさに池上先生に目を向ける。
 天土くんはゆったりと話しかけた。

「先生。仕掛けた場所を教えてくれますか?」
「素直に言うと思うかね」
「学校の敷地内ではある?」
「それはそうだ」

 天土くんの冷静な問いに、池上先生は呆れたようにうなずいた。
 ……顔色は変わらない。ウソじゃない。

「校内ですか?」
「どうだろうな」

 目がわずかに泳いだ。少し動揺している。

「新校舎?」
「言わんよ」

 目立った動きはない。どちらかといえば安堵に見える。
 天土くんにアイコンタクトされ、僕は首を横に振った。

「旧校舎か……」

 天土くんは少しばかり意外そうな顔をした。
 池上先生のまぶたが大きく持ち上がる。

「一階ですか?」

 池上先生は顔をしかめて答えない。

「二階?」

 かまわず続けた問いに、池上先生が奥歯を噛みしめたのがわかった。

「三階」

 池上先生は疲れたようにかぶりを振る。
 天土くんにまたアイコンタクトされ、僕はドギマギしながら答えた。

「二階、だと思う。たぶん」
「わかった。急いで探そう」

 天土くんが踵を返す。「あ、おい!」「ちょっと!」と火和くんたちが慌ててその後を追った。
 僕も遅れてそれに続く。
 一度だけ振り返ると、池上先生は困ったように眉を下げて、ただ僕たちを見送っていた。