次の日――というか最近はずっとそうだけど、天土くんは忙しそうに動き回っていた。
生徒会の仕事が多いのかもしれない。
それでも声をかけられるたびに笑顔で相対し、決して相手を邪険にしない。
相談されれば親身に答え、頼まれごとをされればソツなくこなす。
優しくて、スマートで、完璧な生徒会長様だった。
ギャップがすごい……。
「……あれ、木戸くん」
呆れたような、感心したような気持ちで見つめてしまっていたら、気づかれた。
ここは廊下で人目があるからだろう、天土くんは猫を被ったまま話しかけてくる。
「おはよう。僕に用があるのかな」
うーん。
隙のない笑顔といい、一人称といい、なんだかムズムズするな……。
「おはよう、天土くん。金泉くんから話は聞いた?」
「ああ……そうだね。朝一番に聞いたよ。僕の方でも調べてみようと思う」
「そっか。それならいいんだ」
誰に聞かれているかわからないので、決定的なワードは出さないまま会話する。
だけど金泉くんから聞いているなら、僕から話すことはない。
「忙しそうだけど、大丈夫?」
「あはは、これでも丈夫なんだよ。気遣ってくれてありがとう」
目の細め方、覗き見える白い歯、その演出のための口や眉の形、どれもが爽やかで眩しかった。
火の玉を見たときに女子より高い悲鳴を上げていた人物と同じだとは思えない。
「……あ、僕からも一つ伝えたいことがあったんだ。耳、貸してくれる?」
「え?」
ぐっと腕を引っ張られ、口を耳元に寄せられる。
近くにいた女子が「キャアッ」と声を上げた。
おそらく天土くんの行動は全てカッコ良く見えて、今のポーズも絵になっているのだろう。
知らないけど。僕相手に絵になられても困るけど。
なんならモデル料がほしい。
「池上先生が、辞めるらしい」
「――え?」
「ちょっと小耳に挟んだんだけど、気になってね……あわせて調べているんだ。また何かわかれば情報共有しよう」
それだけ言うと、天土くんはニコッと笑って離れていった。
すごく人の良さそうな笑顔なのに……なんだか、距離を感じる。
僕はふいに、金泉くんの「そんな杏ちゃんが一番不自由そうにしていることが多いから、そんな杏ちゃんのことは気に食わないけど」という言葉を思い出した。
……まあ……だからといって、僕に何かできることがあるとは思えないんだけど……。
それにしても。
「池上先生が……?」
何だか、イヤな予感がする。
このままじゃいけないような、そんな胸騒ぎだ。
「……」
僕はぎゅっと胸の前でこぶしを握った。自分を奮い立たせる。
そうして。
「……ねえ!」
とある生徒に、声をかけた。
生徒会の仕事が多いのかもしれない。
それでも声をかけられるたびに笑顔で相対し、決して相手を邪険にしない。
相談されれば親身に答え、頼まれごとをされればソツなくこなす。
優しくて、スマートで、完璧な生徒会長様だった。
ギャップがすごい……。
「……あれ、木戸くん」
呆れたような、感心したような気持ちで見つめてしまっていたら、気づかれた。
ここは廊下で人目があるからだろう、天土くんは猫を被ったまま話しかけてくる。
「おはよう。僕に用があるのかな」
うーん。
隙のない笑顔といい、一人称といい、なんだかムズムズするな……。
「おはよう、天土くん。金泉くんから話は聞いた?」
「ああ……そうだね。朝一番に聞いたよ。僕の方でも調べてみようと思う」
「そっか。それならいいんだ」
誰に聞かれているかわからないので、決定的なワードは出さないまま会話する。
だけど金泉くんから聞いているなら、僕から話すことはない。
「忙しそうだけど、大丈夫?」
「あはは、これでも丈夫なんだよ。気遣ってくれてありがとう」
目の細め方、覗き見える白い歯、その演出のための口や眉の形、どれもが爽やかで眩しかった。
火の玉を見たときに女子より高い悲鳴を上げていた人物と同じだとは思えない。
「……あ、僕からも一つ伝えたいことがあったんだ。耳、貸してくれる?」
「え?」
ぐっと腕を引っ張られ、口を耳元に寄せられる。
近くにいた女子が「キャアッ」と声を上げた。
おそらく天土くんの行動は全てカッコ良く見えて、今のポーズも絵になっているのだろう。
知らないけど。僕相手に絵になられても困るけど。
なんならモデル料がほしい。
「池上先生が、辞めるらしい」
「――え?」
「ちょっと小耳に挟んだんだけど、気になってね……あわせて調べているんだ。また何かわかれば情報共有しよう」
それだけ言うと、天土くんはニコッと笑って離れていった。
すごく人の良さそうな笑顔なのに……なんだか、距離を感じる。
僕はふいに、金泉くんの「そんな杏ちゃんが一番不自由そうにしていることが多いから、そんな杏ちゃんのことは気に食わないけど」という言葉を思い出した。
……まあ……だからといって、僕に何かできることがあるとは思えないんだけど……。
それにしても。
「池上先生が……?」
何だか、イヤな予感がする。
このままじゃいけないような、そんな胸騒ぎだ。
「……」
僕はぎゅっと胸の前でこぶしを握った。自分を奮い立たせる。
そうして。
「……ねえ!」
とある生徒に、声をかけた。
