嘘から始まる恋煩い!(前編)

ただでさえ彼が来てくれたことがおどろきだったのに、彼はわざわざ私のすぐ近くまでやってきて、そして……私の腕をそっとつかんだ。
私は突然のことに心臓がバクバクになるのに、彼はそんなことまったくなさそうに、眉を寄せて私の腕を見つめていた。
「おれもたまに料理するんだけど、火傷って結構続くんだよな。よし、絆創膏もらいに行っちゃう?」
「や、そこまでの傷じゃなくない⁉それに、ちょっとしたら痛みも引くはずだしっ……⁉」
ちょっと過保護なのではというくらい心配する彼を止めるが、彼はそのまっすぐな瞳で私を見た。
「……自分のことは自分で大切にしなきゃ、だよ。それに見た感じ、これ水ぶくれになっていくやつだし。」
「えっ、うそ!」
「うそじゃねーって。ほら、行こ。ホットケーキのことは班の人に任せとけば大丈夫。」

……本当は私たちが今していることは、悪いことなのかもしれない。
だけど、なぜか……五十嵐が私の腕を引っ張ってくれているこの瞬間は、大切にしたいと思った。