嘘から始まる恋煩い!(前編)

一見すれば淡い微笑みを携えているようだけど、その表情の裏には、どうしようもない寂しさと、失望……そして、俺が家族旅行へ行くことへの羨望がうっすら混じっていると感じた。
俺が沈黙してしまったのを敏感に感じ取ったのか、雨音は俺を見て、ニコッと笑った。
「だから海外は初めてでわくわくしているの!桐山もせいいっぱい楽しもう?」
「……ああ、そうだな。」
まずい、俺が雨音のことを笑わせたいと思っていたのに、こっちが元気づけられているようになってしまっている。
雨音はあまり何にも感じないかもしれないけれど、やっぱり俺が雨音にできることを何かしてあげたい。
だから、俺は雨音のように笑い、しっかりと告げた。

「そもそも雨音がいるから、もとから楽しんでるよ。」

そう言った瞬間、雨音はこれでもかというほど目を見開いた。
「………え。」
その顔はみるみる赤を蓄えていき、俺はその様子が微笑ましくてつい口もとを緩めてしまう。
「あ、あり、がとうっ……?」
若干うろたえながらお礼を言う彼女を見て、「ああ、俺の告白は少しは効いているんだな」と思うと、これからもがんばれそうだと思った。