嘘から始まる恋煩い!(前編)

「……え、雨音?」
「えっ……、桐山?」
俺がチケットに書かれた座席番号に従って指定された場所までたどり着くと、そこにはなぜか雨音がいた。
……いや、なぜかではないか。
「えっ、まさか雨音ってここの席?」
「うん、そうだよ。……もしかして桐山、隣?」
「……ああ、うん。よろしくな、雨音。」
「う、うん。よろしく!」
やっべぇ……、どうしよう。
もちろん、自分が恋焦がれる相手と飛行機で隣の席になれるのは、すっごい嬉しい。
というか、可能性が低いだろうと思って考えてもみなかったことだ。
そう、嬉しいことには変わりない……んだけど。
(……大丈夫だよな?俺の理性、持つよな?)
俺が心配しているのは、自身の理性についてだ。
いくらこれが学校の研修旅行で、名目としては勉強のためとはなっていても。
隣には……肩が触れるか触れないかの距離くらいで近くに雨音がいると思うと、思考が全部吹っ飛びそうだ。
.俺が席に座らずにずっと通路で固まっているのを心配に思ったのか、雨音が眉を寄せて俺の顔を覗き込んだ。
「大丈夫、桐山?なんかちょっと顔色悪いよ?」
「ああ、いや大丈夫。……あ、すみません。」
どうやら俺はフリーズしてしまって通路をふさいでいたようだ。見知らぬおじさんが俺を怪訝そうな表情で見つめていたので、俺は恥ずかしくなって慌てて席に座った。