嘘から始まる恋煩い!(前編)

「……ただいま。」
その後は、どうやって帰ったのかうまく覚えていない。
たった一言で心弱すぎだろと言われたらそれで終わりなんだけど、あの言葉だけはおれの頭から離れない。
たぶん、おれに冷たくあしらわれて逆ギレしたあいつがとっさに放った一言なんだろうけれど、的を射ていたからだと思う。
おれの脳内にずっとこびりついていたのは、自分のこんな汚い性格がもし姉ちゃんにバレたら、嫌われるかもしれない……って普段から密かに怯えているから。
「あ、おかえり世那。ちゃんと見送っといた?」
「………ああ。」
おれは母さんにぶっきらぼうに返事をしながら、自室へ向かう。
そのまま部屋についた途端、何をする気にもなれなくて、ベッドに寝転んだ。

このベッドは………、毎晩姉ちゃんと一緒に寝ている場所。
おれの誕生日の時に、一緒に寝る流れを作って、今でもその習慣は続いている。
……こんなの、母さんや父さんが知ったらどうするのかな。
たぶん貞操観念に厳しい母は、激怒するだろう。もしかしたらおれが姉ちゃんと一緒にいる時間を極力少なくするかもしれない。
そんなのは絶対に困る。だからなんとしてでも、このことは親にバレちゃいけない。
「はぁ……。いやだなぁ。」
ボソッと呟いた声は、自分でも思ったより低くて、少し驚いた。
だけど、本当に嫌なんだ。
……こんな、嘘と秘密だらけの家なんて。
お前らのせいで、どれだけ姉ちゃんが傷ついたと思ってるんだ。


だって、おれと姉ちゃんは………。