赤ずきんちゃん、気をつけて

「赤ずきんちゃんてお話あるじゃん。あれね、オオカミは男の人のことなんだって」
 中学校からの帰り道、友達の葵がひそひそ話をするようにそう言った。
「そうなの? なんでだろうねえ」
 私がそう首をかしげると、葵は「決まってるじゃーん」と顔を赤く染めて笑った。
「男の人に襲われないように、ってことだよ! 私たちももう中学生だから、そういうところ気をつけないとね」
「ふーん。そんなもんかなあ」
 私はわかったようなわからないような気持ちでとことこと葵の隣を歩いていた。そしていつもの曲がり角にさしかかった。
「じゃあ、真希ちゃん、また明日!」
 葵が手をふったので、私は待ったをかけた。
「家まで送るよ。こっちの道、人通り少ないんだよね? 最近暗くなるの早いし」
 私の提案に葵は目を丸くした。
「え? そりゃありがたいけど、そしたら真希ちゃんが帰るとき怖いじゃん!」
「私は大丈夫だよ。柔道やってるし」
 私は胸を張った。すると葵は「じゃあお願いしようかな。実は最近ちょっと怖かったの」と眉を下げた。
 二人で暗い道をとことこ歩き始める。歩いているうちに空はどんどん暗くなってくる。葵のうちのほうは田舎なので街頭もあまりない。
「ありがと! ここが私のうちだよ」
 私は初めて葵のうちを知った。
「じゃあ真希ちゃん、ほんと気をつけて帰ってね!」
 優しい葵は、心配そうに私の手を握った。
「うん、また明日ね」
 私は手を振り、葵が家の中に入るのを見届けた。家には明かりはついていない。ご家族はまだ帰ってきていないようだ。
「さて、と」
 私は来た道を振り返った。
「想像以上に人通りが少なかったな」
 私はもう一度あたりを確認しながら歩き、ある場所で立ち止まった。
「葵を襲うのは、このへんがいいかもな」
 そこは小さな公園だった。昼間は子供たちが遊んでいるのだろうが、今は真っ暗で全くひとけがなかった。
 私は頭の中で犯行計画を立てながら首をかしげた。
「なんでみんな、赤ずきんちゃんを襲うのは男の人だって決めつけてるのかな」