きみと描いた星空は、まだ消えない

七番ベンチに腰を下ろして、空を見上げた。

街灯があっても星が見えた。

少ないけれど、確かにそこにある、白い針の先みたいな光。

こんなふうに、ただ空を見上げたのはいつ以来だろう。

絵を描いていた頃は、空の色をよく見ていた。

朝の空、夕方の空、曇った日の空……全部違う色をしていた。

今は、何かをじっと見ることが、できなくなっていた。

見るたびに、あの日のことを思い出すから。


冬の風が吹いて、わたしの前髪を揺らした。

こんなところに来てどうするんだろう、と思った。

でもここ以外にいられなかった。

ただ星を、見上げていた。

誰かに見せるわけでもなく、誰かに伝えるわけでもなく、ただ見ていた。

こんなふうに何かをただ見ていたのも、久しぶりだった気がした。

描くことをやめてから、わたしは何かをじっと見るということを、しなくなっていた。

見ても、形にできないから。

形にできないなら、見ても意味がないから。

でも今夜は、ただ見ていた。

冬の星は鋭くて、少しだけ怖かった。

でも綺麗だった。

何かを失った人は、夜が綺麗に見える……そんな言葉が、どこからともなく頭に浮かんだ。

誰かに言われたわけじゃない。ただ、そう思った。

わたしは今、夜が綺麗に見えている。

ということは、わたしは何かを失っているのかもしれない。

絵を、失った。

でも、それだけじゃなかった。

誰かを信じる気持ちも、学校へ行ける足も、朝に起き上がれる理由も……全部、あの日から少しずつなくなっていった。

星が、じわりとにじんで見えた。

泣いているのかもしれなかった。

でも涙が出ているのかどうか、よくわからなかった。ただ、星がにじんでいた。

どれくらいそうしていたかわからない。

やがてバスターミナルの時計が、一時を表示する。

わたしは立ち上がって、夜の国道を歩いて家に帰った。