きみと描いた星空は、まだ消えない

窓の外の空を、一緒に見た。

まだ青い冬の空だった。

星の姿はなかったけれど、確かに、あの星たちはそこにいる。

見えなくても、そこにいる。


「……結羽に会えてよかった」


しばらくして、蒼生が言った。

わたしは返事ができなかった。


「結羽がバスターミナルに来てくれなかったら、俺、ずっと一人で星数えてたと思う」

「……蒼生がいてくれてよかったのは、わたしの方だよ」


視線は窓の外のまま、蒼生は目を細めながら、小さくうなずく。


「結羽と一緒に、絵が描けてよかった」

「……うん」

「ちゃんとつながったね」


その言葉に、わたしは唇をぎゅっと噛んだ。

泣かない……泣かない。

でも目の奥が、じわじわと熱くなった。

蒼生がふと、窓の外から視線をわたしに戻した。


「結羽さ」

「うん?」

「絵、続けてね」


わたしは黙ってうなずいた。


「下手くそでもいいから」

「また下手くそって言った」


蒼生は笑った。

でもすぐに、真剣な目になった。


「結羽の絵、本当に好きだったよ。見えてるものが、ちゃんと伝わってくるから。そういう絵って、なかなか描けないんだよ」


わたしは何も言えなかった。


「これから色んなことあると思う。嫌なこととか、怖いこととか。でも、そのたびに描いてほしい。嬉しいときも、悲しいときも、全部。結羽が見た景色を、ちゃんと残してほしい」

「……うん」

「誰かに見せなくていいから。評価されなくていいから。描きたいときに、自分のためだけに描けばいい。それだけで十分だよ」


わたしは唇を噛んだ。

泣かない、と決めていたから。

でも蒼生の言葉が、じわじわと胸に染みてきた。


「……わたしが描いた地上、本当に夜空とつながってた?」


思わず聞いていた。


「つながってた」


蒼生はすぐに答えた。


「ちゃんとつながってた。最初からずっと」


わたしはうなずいた。

それだけで、何かが決まった気がした。

描き続けよう、と思った。

蒼生が言ったから、じゃなくて、自分が見た景色を残したいから。


「また、星、数えようね」


蒼生が言ったから、わたしは、力強くうなずく。


「また、数えよう」


と答えた。

声が少し震えたかもしれない。

でも笑った。ちゃんと笑えた。

それが、蒼生と交わした最後の言葉だった。


帰りは、蒼生のお母さんが駅まで送ってくれた。


「蒼生がね、結羽さんと会ってから、絵を描くのが楽しそうになったんです」