きみと描いた星空は、まだ消えない

新年が訪れた。

年が変わっても、特別に何か変わるわけでもなく、わたしはバスターミナルへ行き続けた。

『あけましておめでとう』という言葉も交わす事なく、いつものように挨拶をする。

バスターミナルにあったクリスマスの広告は、新年初売りの広告に変えられていた。

世間で交わされているような『今年の目標』というのを掲げるわけでもなく、わたしも蒼生もいつもの定位置に座っていた。

晴れた夜は必ず蒼生がいて、二人で並んで絵を描いた。

スケッチブックのページが増えていった。

地上と夜空のページが、一枚ずつ積み重なっていった。


冬休みが明けても、わたしは学校へ行かなかった。

それについて、お母さんは何も言わなかった。

先生から電話が来て、お母さんが対応していた。

「まだ少し難しいみたいで」という声が廊下から聞こえてくる。

わたしは部屋でその声を聞きながら、膝を抱えていた。

世界は着実に変わり続けている。

だけどわたしを取り巻く環境は基本的に何も変わってはいない。

絵を描けるようになった事も、素直に自分の気持ちを口にできる事も、蒼生がそばにいる時だけだ。

世界が変わる事を、わたしは別に望んではいない。

もちろん、このままではいけないという事も頭の片隅では理解できている。

でもわたしは、まだ外界に出て行けるほどの勇気も気力も持ち合わせてはいなかった。


その証拠に、昼間は相変わらず長く感じていた。

カーテンを開けると、近所の子どもたちが外で遊んでいることがあった。

そんな日はすぐカーテンを閉めた。

自分だけが時間の外にいるみたいで、それが苦しかった。

でも夜になると、バスターミナルへ行けた。

蒼生がいる……それだけで、一日が報われる気がした。

昼間のわたしと、夜のわたしは、別の人間みたいだった。

昼間は部屋の天井を見ていることしかできなくて、夜はバスターミナルで絵を描いている。

同じわたしなのに、こんなに違う。

蒼生はそのどちらも知らなかった。

夜のわたししか知らない。

でも夜のわたしの方が、本当のわたしに近い気がした。


年が明けてしばらくは、蒼生は変わらずそこにいた。

晴れた夜は必ず来ていた。

スケッチブックを膝に置いて、鉛筆を動かして、ときどきわたしに話しかけて、また空を見る。

その繰り返しが、わたしには何より大切だった。