きみと描いた星空は、まだ消えない

開けないカーテンの向こうからシトシトと雨の降る音がした。

雨の音は心地よい。

余計な雑音を消してくれるから。

わたしは起き上がる事もなく、雨の音を聞きながら目を閉じた。


中学二年生の秋のはじめ。


「ねえ、その絵、すごく上手いね」


美術の授業で描いた風景画の下描きを、同じクラスの子がほめてくれた。

不意に声をかけられ、わたしは驚いてしまった。

なぜなら、声をかけてくれた子とは同じグループではないし、何ならわたしと違って、目立つタイプの子だったから。


「構図がいい、どうやって考えたの?」

「考えたっていうか……見た物を素直にそのまま描いただけで……」

「もっと見たいな。見せてくれる?」


と彼女は言った。

普段あまり褒められることがなかったわたしは嬉しくて、下書きのスケッチブックをそのまま見せた。

翌月、市の絵画コンクールで、彼女が賞を取った。

展示された彼女の絵を見たとき、足が止まった。

構図が、わたしの絵と全く同じだった。

空の描き方も、地面の奥行きも……。

ただ、違ったのはタイトルだけ。

わたしはすぐに自分が描いた下描きを持って、美術部の顧問のところへ行った。

でも返ってきた言葉は、


「部活中に描いたものならまだしも、あなたは美術の授業で描いたものなんでしょう?」


と、取り合うのがめんどくさそうで、冷たかった。

わたしはそれ以上、何も言えなかった。

彼女の方が発言力があり、周りに訴えたとしても、ただの僻み、妬み、嫉みとしか見られないのはわかっていたから。

それすらも彼女の中で計算されていたのだろう。

当たり前だけど、彼女は何も言わなかった。

周りから称賛の言葉を浴びながら、ただ、賞状を持って誇らしげに笑っている。

わたしと目を合わせる事無く。

次の日、学校に行きたくなくて休んだ。

絵を描くどころか、スケッチブックすら見る事ができなくなった。


あれからまだ一ヶ月しか経っていない。

でも学校にはもう行けなくなっていた。

毎朝制服を着て、玄関まで行ってはみるけれど、ドアの前で動けなくなる。

足が、前に出なかった。


昼間は部屋にいた。

カーテンを閉めたまま、天井を見ていた。

夜になると少し楽になった。

暗くなると、世界が小さくなる気がして、その小ささが息をしやすくした。

それでも、眠れない夜があった。