バスターミナルを出るとき、蒼生よりいつもわたしが先に帰る。
蒼生が先に立ち上がることはなかった。
わたしが「帰るね」と言って、蒼生が「うん」と言って、「おやすみなさい」で別れる。
それがいつもの流れだった。
だから、蒼生が帰る方向を、わたしは知らなかった。
右へ曲がるのか、左へ曲がるのか、駅の方なのか、国道の方なのか。
どこに住んでいるんだろう、と思った。
何歳なんだろうとも思った。
学校には行っているのだろうか。
家族はいるのだろうか。
蒼生のことを、わたしはほとんど何も知らなかった。
名前と、好きな星座と、スケッチブックを何年も描き続けていること……それだけだった。
なのに、どうしてこんなに気になるんだろう。
答えは出なかった。
でも、出なくてもよかった。
次の晴れた夜にバスターミナルへ行けば、蒼生はいる。
それだけで十分だった。
でも同時に、漠然とした不安も感じていた。
蒼生は、どこかおかしかった。
深夜に一人でバスターミナルへ来て、星を数えて、誰かを待っているわけでもなく、誰かを探しているわけでもなく、ただそこにいる。
色白で首が細くて、どこか遠くを見るような目をしていることがある。
笑い方がきれいすぎる、という言い方もできた。
悲しいことを全部知った上で笑っているみたいな、そういう笑い方。
「慣れてる」という言葉が、頭に引っかかったままだった。
何に慣れているんだろう。
寒さに?
夜に?
それとも、もっと別の何かに?
住んでいる世界が、自分とは違う気がした。
その違和感を、わたしはしばらく、自分の中だけにしまっておいた。
蒼生が先に立ち上がることはなかった。
わたしが「帰るね」と言って、蒼生が「うん」と言って、「おやすみなさい」で別れる。
それがいつもの流れだった。
だから、蒼生が帰る方向を、わたしは知らなかった。
右へ曲がるのか、左へ曲がるのか、駅の方なのか、国道の方なのか。
どこに住んでいるんだろう、と思った。
何歳なんだろうとも思った。
学校には行っているのだろうか。
家族はいるのだろうか。
蒼生のことを、わたしはほとんど何も知らなかった。
名前と、好きな星座と、スケッチブックを何年も描き続けていること……それだけだった。
なのに、どうしてこんなに気になるんだろう。
答えは出なかった。
でも、出なくてもよかった。
次の晴れた夜にバスターミナルへ行けば、蒼生はいる。
それだけで十分だった。
でも同時に、漠然とした不安も感じていた。
蒼生は、どこかおかしかった。
深夜に一人でバスターミナルへ来て、星を数えて、誰かを待っているわけでもなく、誰かを探しているわけでもなく、ただそこにいる。
色白で首が細くて、どこか遠くを見るような目をしていることがある。
笑い方がきれいすぎる、という言い方もできた。
悲しいことを全部知った上で笑っているみたいな、そういう笑い方。
「慣れてる」という言葉が、頭に引っかかったままだった。
何に慣れているんだろう。
寒さに?
夜に?
それとも、もっと別の何かに?
住んでいる世界が、自分とは違う気がした。
その違和感を、わたしはしばらく、自分の中だけにしまっておいた。


