きみと描いた星空は、まだ消えない

「美術部の顧問にも下描きした物を持って行ったけど、冷たくあしらわれた。彼女の方が発言力はあったし、わたしが何を言っても妬みとか僻みとか……そんな風にしか見えないんだろうなって思ったら、どうでもよくなっちゃって」


わたしはただ、絵を描く事が好きで描いた。

その好きな事を誉められて、純粋に嬉しかったのに。

好きな事を誰かに誉められたり、認めてもらえたりする事ほど、光栄な事なんてないと思っていたから……。

絵だけでなく、そんな気持ちを全て奪われた。


「……結羽は何も悪くない」


少しの沈黙の後、蒼生がぽつりと言った。

わたしは返事ができなかった。

全部話していないのに、なぜそんなことを言えるんだろうと思った。

でも、言われた瞬間、胸の奥の何かがほどけそうになった。

蒼生はまた空を見上げる。


「人の真似をして描いたとしても、長くは続かない。真似でしかないし、そこに描いた人の感情は何もない。見る人が見ればわかる」

「見る人が見れば……」


じゃあ、美術部の顧問も称賛していた友達も、賞の主催者も……見る目を持っていなかったって事?

そんな事ってあるの?

誰ひとりとして、わたしの絵を盗んだなんて疑いもしないなんて……。


「でも、結羽が絵を描くのをやめるなんてもったいない。描き続ければ、きっと世界は変わる。結羽の事は星がちゃんと見てるから。悪い事をした人は、そのうち何らかの形で全てバレるよ」


夜空を見たまま、なんでもないように言った。

でもその言葉は、わたしの胸の奥の、一番冷たい場所に、静かに落ちた。

蒼生の言葉は、責めているわけでも諭しているわけでもない。

もちろん慰めでも励ましでもなかった。

蒼生をまとう雰囲気のせいか、不思議と全てが魔法の言葉のように優しくわたしに返ってきた。

多分、他の人に同じことを言われたら、きっと耳をふさいでしまった事だろう。