執事じゃないと言えないコト

「うへぇ……いつの間に。気づかなかった」
「そりゃな」
「そうでしょうね」
「だよねー☆」
「……皆さんの反応に、たいそうな含みを感じるのはいかがか」
「「「気のせい」」」

 面白がってるよこの人たち。
 じゃなくて!

「小竹先輩……なんでここまでして、琴音のことを」

 部室に戻り、最初に見せてもらったのは、とある映像。
 僕と琴音の後ろ姿を追いかける、同じ学園の制服を着た男子生徒。
 誰かはすぐに分かった。
 あの小竹先輩である。

「というか、誰が撮影してたんですかこれ」
「それはもちろん」
「セバスチャン先輩でーす! こういうの、得意だからね」

 へー、セバスチャンさんにそんな特技が。
 と思って、彼に視線を向けると……

「けっ……どうせ素に戻れば、ぼっち陰キャオーラ全開でバレませんよーだ」
「なんで、執事モードなのに、若干本来の性格が顔を出しているんですか」

 つまり、執事の姿じゃなくて、同じく学生服に着替えてたと。
 でもって、そのまま僕らをストーキングする小竹先輩を追いかける。
 バレる心配は、本人のオーラで気配を消しきっていたと。

「やっぱさー、王道らしくそのギャップを有効活用しないとだよね~」
「この振れ幅は、タカラジェンヌ目線でも羨ましい限りです。マネできません」
「絶対に褒めてないってのだけは、わかるぞ。オレでも。さすがに」

 ったく、と肩を落とすセバスチャンさん。
 その、ドンマイです。

「さて、セバスチャン遊びもほどほどにして」
「おい、スミス」
「本題に移りましょう」
「おい、スミス」
「……なんでしょう?」
「遊びっつーたな!? 人で遊ぶとはどういうことだよ!」
「さて、今回問題なのは」
「おいぃ――――!?」
「はーい、セバスチャン先輩。静かにしてくださーい。つか、うっさい」

 スミスさんは、淡々とホワイトボードに書き込んでゆく。
 そこには、現状発生している問題点について書かれていた。

 ・テニス部から依頼があった、柚葉琴音の保護及び護衛
 ・小竹先輩による、今後の妨害予想

「まず、1つ目ですが……先ほど、テニス部から正式に依頼がありました」
「そうなんですか?」
「そうだよー。小竹ってやつ、めっちゃ暴れて手に負えないみたいでさ」

 なんでも、テニス部における彼の行動はかなり目に余るもののようだ。
 顧問の先生すらもお手上げになるほどに。

「んで、オレら執事喫茶部に彼女の護衛をってね」
「はい! 質問」
「なにかな、ベディくん」
「琴音を助けたい。が、根本的に……なんでこんなことをやるんですか!?」

 まずここだ、僕としての疑問点は。

「ただの部活ですよね! ここ!」
「執事喫茶部は、建前上は外部の人間によって経営されているけどよ」
「学園長お墨付きの、問題解決組織でもあるんだよね~。ボクもビックリ」

 初耳な情報が!?
 というか、学園長お墨付きって。

「まぁ、設立した人の趣味でこんな執事で喫茶な部活になっているんだがな」
「趣味て……それで納得するんですか、セバスチャンさん」
「腐っても、学園創立からある由緒正しい場所だ。諦めろ」

 ダメだ。
 この部の成り立ちを深掘りすると、僕がツッコミに追い付かない。
 というか、頭痛がしてきた。

「要するに、学園内のトラブルも解決するのがオレらの役目ってワケ。おっけぃ?」
「わかりました」

 琴音を守ることが今回の依頼なわけだし。
 うん、この件は一旦横に置いてスルーしよう。

「では、話を続けますね。2つ目の小竹による妨害予想です」
「スミス先輩は、どういうことをやってくると睨んでますかーっと」
「良い質問ですね、アルフレッド。花丸をあげましょう」
「やった!」

 アルフレッドさん、緊張感ゼロすぎませんか。
 結構、大問題な気配しかしないんですけど。

「恐らくですが、彼はわたくしたちの正体を暴こうとするでしょう」
「えー!? スミス先輩。なんでも聞いちゃうけど、その理由がわかりません!」
「本来の姿が判明すれば、周囲が勝手に足止めをするからです」

 あっ、ここで仮入部前に出た話題が。
 執事だとバレると、喫茶のノリであれこれと僕らにお願いをしてくる可能性が。
 特に、男子生徒とかは面白半分で言ってきそうだよな。
 おーい、ベディヴィエール! 王様命令〜、とか。
 うっわ、想像しただけで、その光景がありありと目に浮かぶ。

「そうなってしまっては、護衛どころじゃなくなるわな」
「というわけで、部室に戻ってきてもらったのです」
「そっか。学生寮に直接戻ったら、バレるじゃん」

 あそこに住んでいるのは、執事喫茶部のメンバー(学生モード)だし。
 そこに執事が戻ったら、もうそりゃバレバレだ。

「誰がターゲットにされるかは不明ですが、現状恐らくは……」
「まー、琴音お嬢様を護衛した、ベディヴィエールだわな」
「先輩たち、分かってて行かせたのに薄情な~」

 ベディ先輩がかわいそー、と嘆く振りのアルフレッドさん。
 正直、キミの方が薄情だと思います。

「そこは、あまり気にしないかな。琴音が心配だし」
「わーお。好きな人を一途に守り抜く精神、えらーい」

 ぱちぱちと拍手が。
 ノリが本当に……

「もちろん、全員注意すべきではあります」
「つーわけで部長命令! 全員、しばらくは周囲に注意せよ!」
「「了解!」」