「さーて、まずはお仕事だ!」
「状況整理じゃなくて!?」
学生寮を経由し、やってきました執事喫茶部の部室。
先に着いていたスミスさんたちにより、準備は万全。
喫茶開始までの間に……と思ったらコレだ。
「馬鹿いえ。オレらの使命は、まずお客様たちを癒すこと。おっけぃ?」
「わー……セバスチャンさん、本当にオンオフ激しい」
先ほどまでの、僕の後ろに隠れていた先輩はどこへやら。
完全に、いつものゴーイングマイウェイな執事になった。
「よっ、王道テンプレ執事先輩~! 今日も絶好調~!」
「あるあるを全網羅する気のセバスチャンですので、今更かと」
「がふっ!」
「わ――――ッ!? セバスチャンさん―――!」
2人から放たれる、容赦ない言葉の暴力にセバスチャンさんは屈した。
滑らかな動きで、両手を床につけて……
「聞いたか、ベディくん。あいつら、人が一番気にしていることを……ッ」
「「何をいまさら」」
合言葉は、テンプレが悪い。
そんな心の声が聞こえてきそうなぐらいだよ。
「しかし、災難でしたね。ベディヴィエール」
「ホントだよ~、スマホ越しだったけどさ、ボクも冷や汗ものだったし」
「スミスさんも、アルフレッドさんも、援護ありがとうございます」
「お気になさらず。お客様を守ることも、わたくしたちの仕事ですから」
うーん、スミスさんは平常運転だ。
なお、アルフレッドさんは、落ち込むセバスチャンさんをいじっている。
追い打ち、良くない。
「琴音さんの件は、いったんはテニス部に任せましょう」
「だ、だけど……」
「助けたい気持ちはわかるけどさ~、中途半端は良くないって」
うぐっ、それを言われると。
「どうせなら、自信をつけて彼女を小竹から守るぐらいになろうぜ」
「セバスチャンさん……」
「今回の件で、彼女はフリーだってほぼ確定したわけだし。なっ」
何とか気持ちを持ち直したのか、セバスチャンさんは立ち上がる。
そのまま、ニカッ、と微笑みながら親指を立て
「焦る必要はない。まずは、彼女の一番星。そうだろ!」
「……はいっ!」
「よーし、気合が入ったところで、本日も営業時間だ。やるぞ!」
「「「おー!」」」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ベディくんは、普段何をやっているの?」
「勉強を頑張っています。そうじゃないと、すぐに置いていかれるので」
もちろん、琴音に。
だって、学年成績トップクラスだし。
「ベディヴィエールくん、好きな食べ物を教えて!」
「そうですね……その、スフレパンケーキとか好きだったりします」
琴音が好きなスイーツだから、必然的に食べる回数が増えて。
気が付けば、僕も、いろんな味や食感を食べ比べして分かるようになったし。
(うーわー、自分で思い返しててだいたい琴音由来じゃん。恥ずかしい)
顔が熱くなりそうというか。
手で仰ぎたいけど、さすがに執事らしくないよなー……
と、思っていると。
「キャー、ベディくん恥ずかしがってる~」
「甘いもの好きなの隠したかったのかな? でも教えてくれたんだね」
「やばい、やっぱりいじめたい」
という小声の会話が聞こえてきた。
……やっぱり、僕のその評価は不本意!
「お嬢様がた。あまり期待の新人である彼をいじめないでくださいませ」
「「「キャー! スミス様ー!」」」
そこに、助け舟を出すようにスミスさんがやってきた。
助かります、本当に。
「ここから先は、わたくしとお話をいたしませんか?」
「いいんですか!?」
「もちろんでございます。ベディヴィエール、あなたには別途ご指名が」
昨日から執事喫茶で働きだしたばかりの僕を指名?
誰だろう。
首を傾げながら、僕はセバスチャンさんの元へ。
「セバスチャンさん。僕を指名って……どちらのお嬢様でしょうか」
「あそこのテーブルにいらっしゃる皆様だぜ」
みなさま?
と、首を傾げながら視線をそちらに向けると、琴音がいた。
「ことっ……!?」
「しぃー」
思わず叫びそうになった瞬間、口をセバスチャンさんによって塞がれた。
「ベディくーん? まずは態度から。執事は常に冷静に、優雅に、だぜ」
「ふひまひぇん……ぷはっ! あ、あの、それでセバスチャンさん!」
「どうやら、今日も避難してきたっぽいぜ。今、アルフレッドは外で別件対応中だ」
そういえば、確かにアルフレッドさんの姿が見えない。
外ってことは……
「まさか、小竹先輩が……!」
「安心しな。アイツはアレで、煽っていじめるのが好きなのさ」
「いやいや、良くないですよ! この前は暴力が即飛んできたわけで……」
「当人曰く『前回で加減を覚えたから楽勝~!』だってよ」
アルフレッドさ――――ん!
大丈夫なの!? 暴力振るわれてない!?
「僕、援護に……」
「やめとけって。お前=春樹、これがバレたらどうなるか忘れたのか」
「うぐっ……だったら、アルフレッドさんだって……あ、そうか」
「気づいたな。小学生が、こんな場所にいるわけないだろ、フツー」
それを部長であるあなたが言いますか。
素の状態だったら、僕と同意見でしょ絶対。
「何事も適材適所。任せるべき場所は任せな。おっけぃ?」
「いやでも、危ないですって!」
「お前はもっと、やるべきことがあるだろ」
チラリ、とセバスチャンさんは視線を琴音がいるテーブルに向ける。
「守るべき王を不安にさせるな」
はっ、として僕は同じ場所に視線を向ける。
友達と楽し気に話しているけど……
(どこか、不安そう……?)
少しソワソワして、入り口を気にしているっぽい。
それに、右手の親指だけをずっと握っている。
……あれは、彼女の癖。
小さい頃から、不安だったらやってるんだよね。
「誰をまず安心させるか。それを見失うんじゃねーよ。王の執事だろ」
「……はい」
「状況整理じゃなくて!?」
学生寮を経由し、やってきました執事喫茶部の部室。
先に着いていたスミスさんたちにより、準備は万全。
喫茶開始までの間に……と思ったらコレだ。
「馬鹿いえ。オレらの使命は、まずお客様たちを癒すこと。おっけぃ?」
「わー……セバスチャンさん、本当にオンオフ激しい」
先ほどまでの、僕の後ろに隠れていた先輩はどこへやら。
完全に、いつものゴーイングマイウェイな執事になった。
「よっ、王道テンプレ執事先輩~! 今日も絶好調~!」
「あるあるを全網羅する気のセバスチャンですので、今更かと」
「がふっ!」
「わ――――ッ!? セバスチャンさん―――!」
2人から放たれる、容赦ない言葉の暴力にセバスチャンさんは屈した。
滑らかな動きで、両手を床につけて……
「聞いたか、ベディくん。あいつら、人が一番気にしていることを……ッ」
「「何をいまさら」」
合言葉は、テンプレが悪い。
そんな心の声が聞こえてきそうなぐらいだよ。
「しかし、災難でしたね。ベディヴィエール」
「ホントだよ~、スマホ越しだったけどさ、ボクも冷や汗ものだったし」
「スミスさんも、アルフレッドさんも、援護ありがとうございます」
「お気になさらず。お客様を守ることも、わたくしたちの仕事ですから」
うーん、スミスさんは平常運転だ。
なお、アルフレッドさんは、落ち込むセバスチャンさんをいじっている。
追い打ち、良くない。
「琴音さんの件は、いったんはテニス部に任せましょう」
「だ、だけど……」
「助けたい気持ちはわかるけどさ~、中途半端は良くないって」
うぐっ、それを言われると。
「どうせなら、自信をつけて彼女を小竹から守るぐらいになろうぜ」
「セバスチャンさん……」
「今回の件で、彼女はフリーだってほぼ確定したわけだし。なっ」
何とか気持ちを持ち直したのか、セバスチャンさんは立ち上がる。
そのまま、ニカッ、と微笑みながら親指を立て
「焦る必要はない。まずは、彼女の一番星。そうだろ!」
「……はいっ!」
「よーし、気合が入ったところで、本日も営業時間だ。やるぞ!」
「「「おー!」」」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ベディくんは、普段何をやっているの?」
「勉強を頑張っています。そうじゃないと、すぐに置いていかれるので」
もちろん、琴音に。
だって、学年成績トップクラスだし。
「ベディヴィエールくん、好きな食べ物を教えて!」
「そうですね……その、スフレパンケーキとか好きだったりします」
琴音が好きなスイーツだから、必然的に食べる回数が増えて。
気が付けば、僕も、いろんな味や食感を食べ比べして分かるようになったし。
(うーわー、自分で思い返しててだいたい琴音由来じゃん。恥ずかしい)
顔が熱くなりそうというか。
手で仰ぎたいけど、さすがに執事らしくないよなー……
と、思っていると。
「キャー、ベディくん恥ずかしがってる~」
「甘いもの好きなの隠したかったのかな? でも教えてくれたんだね」
「やばい、やっぱりいじめたい」
という小声の会話が聞こえてきた。
……やっぱり、僕のその評価は不本意!
「お嬢様がた。あまり期待の新人である彼をいじめないでくださいませ」
「「「キャー! スミス様ー!」」」
そこに、助け舟を出すようにスミスさんがやってきた。
助かります、本当に。
「ここから先は、わたくしとお話をいたしませんか?」
「いいんですか!?」
「もちろんでございます。ベディヴィエール、あなたには別途ご指名が」
昨日から執事喫茶で働きだしたばかりの僕を指名?
誰だろう。
首を傾げながら、僕はセバスチャンさんの元へ。
「セバスチャンさん。僕を指名って……どちらのお嬢様でしょうか」
「あそこのテーブルにいらっしゃる皆様だぜ」
みなさま?
と、首を傾げながら視線をそちらに向けると、琴音がいた。
「ことっ……!?」
「しぃー」
思わず叫びそうになった瞬間、口をセバスチャンさんによって塞がれた。
「ベディくーん? まずは態度から。執事は常に冷静に、優雅に、だぜ」
「ふひまひぇん……ぷはっ! あ、あの、それでセバスチャンさん!」
「どうやら、今日も避難してきたっぽいぜ。今、アルフレッドは外で別件対応中だ」
そういえば、確かにアルフレッドさんの姿が見えない。
外ってことは……
「まさか、小竹先輩が……!」
「安心しな。アイツはアレで、煽っていじめるのが好きなのさ」
「いやいや、良くないですよ! この前は暴力が即飛んできたわけで……」
「当人曰く『前回で加減を覚えたから楽勝~!』だってよ」
アルフレッドさ――――ん!
大丈夫なの!? 暴力振るわれてない!?
「僕、援護に……」
「やめとけって。お前=春樹、これがバレたらどうなるか忘れたのか」
「うぐっ……だったら、アルフレッドさんだって……あ、そうか」
「気づいたな。小学生が、こんな場所にいるわけないだろ、フツー」
それを部長であるあなたが言いますか。
素の状態だったら、僕と同意見でしょ絶対。
「何事も適材適所。任せるべき場所は任せな。おっけぃ?」
「いやでも、危ないですって!」
「お前はもっと、やるべきことがあるだろ」
チラリ、とセバスチャンさんは視線を琴音がいるテーブルに向ける。
「守るべき王を不安にさせるな」
はっ、として僕は同じ場所に視線を向ける。
友達と楽し気に話しているけど……
(どこか、不安そう……?)
少しソワソワして、入り口を気にしているっぽい。
それに、右手の親指だけをずっと握っている。
……あれは、彼女の癖。
小さい頃から、不安だったらやってるんだよね。
「誰をまず安心させるか。それを見失うんじゃねーよ。王の執事だろ」
「……はい」

