今回の課題は『総合テスト』と銘打たれた。
「1日で見つけるって、普通に厳しくない?」
ヒントは無し。
これまでのことを応用して、普段のセバスチャンさんを見つけろ。
「アルフレッドさんの時でさえ、1週間の猶予があったのに」
というツッコミを思いついたのは、かなり遅かった。
何故なら、今の時刻は、課題をだされた翌日の放課後なのだから。
(どこにいるんだろうなぁ、セバスチャンさんは)
正直、検討がまったくつかない。
実は学園の先生でした! とか?
3年生教室のどこかに、という条件も矛盾はしないし。
普通の生徒だったら、実は生徒会長とか……?
(うーん、分からない)
ノーヒントは、あまりにもひどすぎる。
正体バレ=学園を退学。なんだよ。
そんな、一瞬で『この人、セバスチャンさん!』はありえない。
「一か八か、3年生のみなさんに聞くしかないか」
答えが返ってくるとは思えない。
思えないんだけど、それぐらいしか選択肢がないわけで。
(えっと……セバスチャンさんの正体バレを避けつつ、となると)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「「「クラスで一番、姿勢が正しい人?」」」
「はい。変な質問で、本当に申し訳ないのですが……」
まずは3-Aを訪れた僕は、放課後残っていた生徒さんに質問した。
正直、この質問ぐらいしか絞り込む要素がない。
あれだけのイケメンなのに、噂に聞かない時点で容姿は論外なわけだし。
「実は僕、舞台俳優を目指していて」
嘘です。
脳内イメージは、スミスさんならこうする、という感じだ。
あの人なら、これぐらい平然と、かつ、堂々として問うだろうし。
「演技をする時だけ姿勢が良いのって、難しいじゃないですか」
この言い訳も、当然ながらスミスさんの特訓参照。
聞く時の雰囲気は、アルフレッドさんをトレース。
やっぱり、年上に聞くなら、彼ぐらいに要領の良い『弟系』は便利だ。
「なので、普段からそういうのをちゃんとやれる人から、コツを知りたくて」
とはいえ、ちょっと苦しいかなー、この質問理由。
けど、これ以上ちゃんとした感じは、思いつかないし……!
「ん~、そうねー……誰かいる?」
「ごめん。姿勢が正しいとか、あんまり気にしたことないかも」
「俺も同じく。つか、授業中とか、他人を見ないって」
ですよねぇ。
僕が必死に考えた言い訳以前の問題だった。
セバスチャンさんだって、立派な執事。
しかも、模範的かつ『この名と言えば』を拝命しているんだ。
(これでワンチャン、辿り着くと思ったのに……)
無意識レベルで完璧な立ち振る舞いをしている可能性、あると思ったのに。
いや、もしかしたら、他人にそう思わせない程度でやっているとかは……
「あー、でもさ、質問内容とは真逆だけど、いるじゃん1人」
「あいつ? めっちゃ猫背で根暗な」
「そいやいたな。えーっと、ほら、あそこ。一番奥の席で、読書してるやつ」
と、言われて視線を向けた先には、1人の男子生徒がいた。
ちゃんとブラッシングしている? と、言いたくなるボサボサ頭。
眼鏡のせいか、少し表情が見えづらい。
思いっきり猫背……首が痛くならないのだろうか。
「確かに、いますね」
別の意味で、めっちゃ目立っているというか。
さすがにセバスチャンさんとイコールで結びつけるのは難しい……
(んんんー?)
そこまで来たところで、違和感を覚えた。
えー、ちょっと待って?
「まー、残念ながら俺らのクラスに特筆してそんなやつは……あ、おい!」
「ちょっと、彼、かなり人見知りだから……!」
彼らの静止を無視して、僕は歩みを進める。
正直、かなりの変化球を必死に考えていた。
その原因は、だいたい前例のせいだけどさ。
(でも、可能性としてあり得るし、今日というタイムリミットも納得がいく)
セバスチャンと聞けば、執事だと思うだろう。
執事の名前と言えば、と問われれば、セバスチャンと答えるだろう。
それぐらい、世の中において『王道』に位置する名だ。
(今までだって、名前に意味が必ずあった)
僕であれば、王の側近(執事)
スミスさんは、その道(タカラジェンヌ)のプロを目指す生粋の職人。
アルフレッドさんは、憧れる大人、その理想像でもある賢明で完璧超人。
(となれば、王道、テンプレの象徴たるセバスチャンであれば……!)
僕は、読書を続ける先輩の前までくる。
彼は本に夢中なのか、こちらの存在に気づいていない。
間違えている可能性は、ゼロじゃないけど。
すぅ、と深呼吸をしてから、僕は小さな声で問いかける。
「……見つけましたよ、セバスチャンさん」
「ッッッ!? ッ!」
大げさなぐらいに動揺したかと思うと。
「わ、わわ!?」
ガタタッ! と、すごい音を立てて椅子から落ちた。
わ、わぁ……痛そう。
「な、え、あの……キミ……!」
「違っているなら、すぐ言っていただけると非常に助かります」
「……~~、ちょ、まって、ほんと、まって!」
慌てて立ち上がろうとするも、すぐにふらついて床に戻る。
わ、わぁ……あの、ここまで王道を行かれると逆に困るというか。
「うううぅ……恥ずかしい。穴が、いや、墓穴に入りたい」
「そこまで?」
本で顔を隠しながら、ブルブル震える先輩。
否定しないところを見ると……
「で? 当たりなんですよね」
「……そう、ですぅ」
なんとも情けない声と共に正解を言い渡された。
普段が陽キャの化身、王道執事かと思えば傲慢。
そんなセバスチャンの正体が、人見知り全開の陰キャ系とは。
いやまぁ、王道ですよ? 本来とは真逆が『素の性格』とかさ。
(スミスさんと、アルフレッドさんに毒され過ぎたよな絶対)
正直、本来ならば十分なギャップがあるはず。
なのに、セバスチャンさんのこれが『普通』と思えてしまった。
その事実に、少しだけ僕はショックを受けたのである。
「1日で見つけるって、普通に厳しくない?」
ヒントは無し。
これまでのことを応用して、普段のセバスチャンさんを見つけろ。
「アルフレッドさんの時でさえ、1週間の猶予があったのに」
というツッコミを思いついたのは、かなり遅かった。
何故なら、今の時刻は、課題をだされた翌日の放課後なのだから。
(どこにいるんだろうなぁ、セバスチャンさんは)
正直、検討がまったくつかない。
実は学園の先生でした! とか?
3年生教室のどこかに、という条件も矛盾はしないし。
普通の生徒だったら、実は生徒会長とか……?
(うーん、分からない)
ノーヒントは、あまりにもひどすぎる。
正体バレ=学園を退学。なんだよ。
そんな、一瞬で『この人、セバスチャンさん!』はありえない。
「一か八か、3年生のみなさんに聞くしかないか」
答えが返ってくるとは思えない。
思えないんだけど、それぐらいしか選択肢がないわけで。
(えっと……セバスチャンさんの正体バレを避けつつ、となると)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「「「クラスで一番、姿勢が正しい人?」」」
「はい。変な質問で、本当に申し訳ないのですが……」
まずは3-Aを訪れた僕は、放課後残っていた生徒さんに質問した。
正直、この質問ぐらいしか絞り込む要素がない。
あれだけのイケメンなのに、噂に聞かない時点で容姿は論外なわけだし。
「実は僕、舞台俳優を目指していて」
嘘です。
脳内イメージは、スミスさんならこうする、という感じだ。
あの人なら、これぐらい平然と、かつ、堂々として問うだろうし。
「演技をする時だけ姿勢が良いのって、難しいじゃないですか」
この言い訳も、当然ながらスミスさんの特訓参照。
聞く時の雰囲気は、アルフレッドさんをトレース。
やっぱり、年上に聞くなら、彼ぐらいに要領の良い『弟系』は便利だ。
「なので、普段からそういうのをちゃんとやれる人から、コツを知りたくて」
とはいえ、ちょっと苦しいかなー、この質問理由。
けど、これ以上ちゃんとした感じは、思いつかないし……!
「ん~、そうねー……誰かいる?」
「ごめん。姿勢が正しいとか、あんまり気にしたことないかも」
「俺も同じく。つか、授業中とか、他人を見ないって」
ですよねぇ。
僕が必死に考えた言い訳以前の問題だった。
セバスチャンさんだって、立派な執事。
しかも、模範的かつ『この名と言えば』を拝命しているんだ。
(これでワンチャン、辿り着くと思ったのに……)
無意識レベルで完璧な立ち振る舞いをしている可能性、あると思ったのに。
いや、もしかしたら、他人にそう思わせない程度でやっているとかは……
「あー、でもさ、質問内容とは真逆だけど、いるじゃん1人」
「あいつ? めっちゃ猫背で根暗な」
「そいやいたな。えーっと、ほら、あそこ。一番奥の席で、読書してるやつ」
と、言われて視線を向けた先には、1人の男子生徒がいた。
ちゃんとブラッシングしている? と、言いたくなるボサボサ頭。
眼鏡のせいか、少し表情が見えづらい。
思いっきり猫背……首が痛くならないのだろうか。
「確かに、いますね」
別の意味で、めっちゃ目立っているというか。
さすがにセバスチャンさんとイコールで結びつけるのは難しい……
(んんんー?)
そこまで来たところで、違和感を覚えた。
えー、ちょっと待って?
「まー、残念ながら俺らのクラスに特筆してそんなやつは……あ、おい!」
「ちょっと、彼、かなり人見知りだから……!」
彼らの静止を無視して、僕は歩みを進める。
正直、かなりの変化球を必死に考えていた。
その原因は、だいたい前例のせいだけどさ。
(でも、可能性としてあり得るし、今日というタイムリミットも納得がいく)
セバスチャンと聞けば、執事だと思うだろう。
執事の名前と言えば、と問われれば、セバスチャンと答えるだろう。
それぐらい、世の中において『王道』に位置する名だ。
(今までだって、名前に意味が必ずあった)
僕であれば、王の側近(執事)
スミスさんは、その道(タカラジェンヌ)のプロを目指す生粋の職人。
アルフレッドさんは、憧れる大人、その理想像でもある賢明で完璧超人。
(となれば、王道、テンプレの象徴たるセバスチャンであれば……!)
僕は、読書を続ける先輩の前までくる。
彼は本に夢中なのか、こちらの存在に気づいていない。
間違えている可能性は、ゼロじゃないけど。
すぅ、と深呼吸をしてから、僕は小さな声で問いかける。
「……見つけましたよ、セバスチャンさん」
「ッッッ!? ッ!」
大げさなぐらいに動揺したかと思うと。
「わ、わわ!?」
ガタタッ! と、すごい音を立てて椅子から落ちた。
わ、わぁ……痛そう。
「な、え、あの……キミ……!」
「違っているなら、すぐ言っていただけると非常に助かります」
「……~~、ちょ、まって、ほんと、まって!」
慌てて立ち上がろうとするも、すぐにふらついて床に戻る。
わ、わぁ……あの、ここまで王道を行かれると逆に困るというか。
「うううぅ……恥ずかしい。穴が、いや、墓穴に入りたい」
「そこまで?」
本で顔を隠しながら、ブルブル震える先輩。
否定しないところを見ると……
「で? 当たりなんですよね」
「……そう、ですぅ」
なんとも情けない声と共に正解を言い渡された。
普段が陽キャの化身、王道執事かと思えば傲慢。
そんなセバスチャンの正体が、人見知り全開の陰キャ系とは。
いやまぁ、王道ですよ? 本来とは真逆が『素の性格』とかさ。
(スミスさんと、アルフレッドさんに毒され過ぎたよな絶対)
正直、本来ならば十分なギャップがあるはず。
なのに、セバスチャンさんのこれが『普通』と思えてしまった。
その事実に、少しだけ僕はショックを受けたのである。

