診察対象外なのに、冷徹外科医に逃がしてもらえません

「……重い」

 思わず呟く。

「……」

 立ち上がるのも、少し大変になってきた。

     ◇

「……白石」

「……っ」

 すぐに支えられる。

「……無理をするな」

「……ちょっとだけですよ」

「その“ちょっと”が危険だ」

     ◇

 完全に医者モード。

 でも。

 それ以上に――

     ◇

「……俺がやる」

 荷物を全部持たれる。

「……いいです」

「よくない」

     ◇

「……歩けるか」

「歩けます」

「嘘だ」

「……ちょっとだけ」

「抱えるか」

「……やめてください」

     ◇

 思わず笑ってしまう。

     ◇

「……過保護すぎます」

「当然だ」

 即答。

     ◇

「……何かあれば終わりだ」

 低く言う。

「……え?」

「……お前も、子どもも」

     ◇

 その言葉に。

 はっとする。

     ◇

「……」

 この人、本気で怖いんだ。

     ◇

 命を扱う仕事だからこそ。

 失うことの重さを知っている。

     ◇

「……大丈夫ですよ」

 そっと言う。

「ちゃんと守りますから」

     ◇

 すると。

     ◇

「……違う」

 低く言われる。

     ◇

「……え?」

     ◇

「……守るのは俺だ」

     ◇

 はっきりと。

     ◇

「……」

 言葉が出ない。

     ◇

「……お前は」

 少しだけ近づく。

「何も考えるな」

     ◇

「……」

「……全部、俺がやる」

     ◇

 その言葉に。

 胸がいっぱいになる。

     ◇

「……凌さん」

「何だ」

「……お願いします」

     ◇

 その瞬間。

 そっと抱き寄せられる。

     ◇

「……任せろ」

 低く、でも優しい声。

     ◇

 出産が近づいている。

 不安もある。

 怖さもある。

     ◇

 でも。

     ◇

 この人がいるから、大丈夫だと思えた。