診察対象外なのに、冷徹外科医に逃がしてもらえません

「……なんか」

 お腹に手を当てる。

「少し、出てきましたね」

「ああ」

 黒崎が静かに見る。

     ◇

 安定期に入って、体調はかなり落ち着いた。

 でも。

 体は確実に変わっている。

     ◇

「……重くないか」

「大丈夫です」

「嘘だ」

「……バレます?」

「当然だ」

     ◇

 さらっと見抜かれる。

     ◇

「……座れ」

「はい」

 ソファに座らされる。

     ◇

 そのまま、黒崎が自然に膝をつく。

「……え?」

「……」

 無言で、お腹に手を当てる。

     ◇

「……」

 その手が、すごく優しい。

     ◇

「……動いたか?」

「まだかな」

「……そうか」

     ◇

 少しだけ残念そうな顔。

     ◇

「……楽しみですね」

「……ああ」

 短く答える。

 でも。

 視線は、ずっとお腹に向いている。

     ◇

「……」

「……」

 静かな時間。

     ◇

「……白石」

「はい」

「……体はどうだ」

     ◇

 医者としての質問。

 でも。

 どこか違う。

     ◇

「……大丈夫です」

「……そうか」

     ◇

「……でも」

 少しだけ言う。

「ちょっと不安になるときあります」

     ◇

 その瞬間。

 手が、少し強くなる。

     ◇

「……問題ない」

 低く言う。

「……俺がいる」

     ◇

 その言葉。

 やっぱり、変わらない。

     ◇

 でも今は。

 自分だけじゃなくて。

 この子にも向けられている。