診察対象外なのに、冷徹外科医に逃がしてもらえません

「……ちょっと見てきてもいいですか?」

 小さな雑貨店の前で、陽菜は足を止めた。

「……すぐ戻ります」

「……ああ」

 黒崎は短く頷く。

 そのまま店に入る。

     ◇

「……かわいい」

 小さなアクセサリーや雑貨が並んでいる。

 見ているだけで楽しい。

「……これとか」

 手に取る。

 そのとき。

「それ、似合うと思いますよ」

「……え?」

 振り返る。

 見知らぬ男性だった。

「観光ですか?」
「……はい」

「この辺、初めて?」
「そうですね」

 軽い会話。

 ただそれだけ。

 なのに。

     ◇

「……白石」

「……っ!」

 低い声。

 一瞬で、空気が変わる。

 振り返る。

 黒崎が立っていた。

     ◇

「……行くぞ」

 それだけ。

 有無を言わせない。

「……あ、はい」

 慌てて店を出る。

     ◇

 外に出た瞬間。

 ぐっと腕を引かれる。

「……っ」

 壁際。

 近い。

「……凌さん?」

「……何をしていた」

 低い声。

「……えっと、少し話してただけで」

「……必要ない」

 即答だった。

「……でも」

「必要ない」

 もう一度言う。

     ◇

「……嫉妬ですか?」

 少しだけ意地悪に聞く。

 すると。

「……ああ」

 迷いなく認めた。

「している」

     ◇

「……即答なんですね」

「隠す理由がない」

「……」

「……お前は」

 一歩近づく。

「他の男と話すな」

「……無理です」

「なら、俺の前でやるな」

「……それは」

「見せるな」

 低く言う。

     ◇

「……」

 少しだけ笑ってしまう。

「……わかりました」

「……」

「でも」

 少しだけ顔を上げる。

「私、凌さんのものですよ?」

     ◇

 一瞬、空気が止まる。

     ◇

「……ああ」

 低く答える。

 そのまま。

 強く抱き寄せられる。

「……だからだ」

 耳元で、低く。

「余計に気に入らない」

     ◇

 心臓がうるさい。

 でも。

 嫌じゃない。