診察対象外なのに、冷徹外科医に逃がしてもらえません

ホテルを出た瞬間、空気が違った。

「……すごい」

 思わず足を止める。

 夜の街は、どこを見ても光で溢れていた。

 日本とは違う看板。違う匂い。違う音。

 全部が新鮮で、少しだけ不安で――

「……離れるな」

 低い声。

「……っ」

 次の瞬間、手首を掴まれる。

「……凌さん?」

「人が多い」

 それだけ言って、そのまま歩き出す。

 でも。

 掴んでいた手は、すぐに指へと変わった。

 絡めるように。

 しっかりと。

「……」

 驚く。

 でも。

 嫌じゃない。

「……迷子にならないように、ですか?」

「それもある」

 短く答える。

「……それも?」

 聞き返すと。

「……お前がどこか行くのを防ぐためだ」

「……そんなことしません」

「する可能性はある」

「ないです」

「ある」

 言い切られる。

 思わず笑ってしまう。

「……信用ないですね」
「ある」

 即答だった。

「だから繋いでいる」

「……え?」

「離したくない」

 さらっと言う。

 その言葉に、心臓が跳ねる。

「……ずるいです」

「何がだ」

「そういうの」

 少しだけ顔を背ける。

「……不意打ちすぎます」

 黒崎は何も言わない。

 でも。

 指を絡める力が、少しだけ強くなった。