診察対象外なのに、冷徹外科医に逃がしてもらえません

誓いのキスのあと。

 会場は、どこかざわついていた。

     ◇

「……長いです」

「問題ない」

「……見られてます」

「関係ない」

 即答。

     ◇

 そのまま、腕を引かれる。

「……っ」

「来い」

「どこにですか」

「……少し離れる」

     ◇

 会場の端。

 人目はあるけど、少しだけ距離がある場所。

     ◇

「……白石」

「はい」

「……さっきの顔は何だ」

「……え?」

「途中で、視線が逸れた」

 見られていた。

 完全に。

     ◇

「……ちょっとだけ」

 正直に言う。

「不安になりました」

     ◇

 沈黙。

 そして。

     ◇

「……何に対してだ」

「……」

「……俺か」

     ◇

 視線が、鋭い。

     ◇

「……少しだけ」

 小さく頷く。

     ◇

 その瞬間。

 ぐっと腕を引かれる。

「……っ」

 完全に抱き寄せられる。

     ◇

「……まだわからないのか」

 低く言う。

「……」

「……何度言わせる」

     ◇

 耳元で。

     ◇

「……俺は、お前しか見ていない」

     ◇

 心臓が、止まりそうになる。

     ◇

「……それを」

 少しだけ離れる。

「この場で証明するか」

「……え?」

     ◇

 そのまま、手を引かれる。

 再び、中央へ。

     ◇

「黒崎先生?」

 誰かが声をかける。

     ◇

 でも。

 黒崎は気にしない。

     ◇

「……全員聞け」

 低い声。

 でも、よく通る。

     ◇

 会場が静まる。

     ◇

「……この女は」

 陽菜の肩を引き寄せる。

     ◇

「俺の妻だ」

     ◇

 空気が止まる。

     ◇

「……誰にも渡さない」

     ◇

 その言葉に。

 顔が一気に熱くなる。

     ◇

「……っ」

「……以上だ」

 それだけ言って。

     ◇

 そのまま、唇が触れる。

 軽く。

 でも、確実に。

     ◇

「……」

 もう、何も言えない。

     ◇

 ただ。

 この人に選ばれたことだけが、すべてだった。