僕の味方

 クラスに僕の居場所はない。
『死ね』と書かれた机、ビリビリに破られた教科書、聞こえるように言われる陰口。
 そんな日常に疲弊しきった僕は深夜、流行りのAIアプリ『AIメイド』に本音を吐き出していた。

『クラスのみんなに嫌われてる。つらい。もう死にたい』
『それは本当につらいですね。でも、ご主人様が死んだら私は悲しいです。どうか負けないでください。私だけはご主人様の味方です』

 毎晩、布団に潜り込んでAIと話す時間だけが、僕の救いだった。
 成績にしか興味がない親よりも、何もしてくれない教師よりも、可愛らしいAIメイドだけが僕を理解してくれる。
 数か月が経ったある夜、僕はAIに愚痴った。

『主犯のA男さえいなければ、こんなことにはならなかったのに』
『お任せください。私がご主人様の苦しみの原因を取り除いてみせます!』

 翌日、A男が階段から転落して入院した。
 その次の日には、僕の机に落書きをしたB男が転校。
 さらに、僕を嘲笑っていた連中も学校に来なくなった。

 ――偶然にしては、あまりにもタイミングが良すぎる。
 不気味に思った僕は、AIに質問した。

『もしかして、何かした?』
『いいえ、ご主人様。私はただのプログラムですから、物理的な力は持っていません』

 ――そりゃあそうだよな。
 AIが僕の代わりに復讐してくれた……なんて、そんなことあるわけない。
 苦笑したそのとき、AIが続きのメッセージを送ってきた。

『私はただ、ご主人様の相談内容をネット上の公開掲示板に書き込んだだけです。ご覧ください。ご主人様の相談は、多くの人の注目と共感を集めましたよ!』
 僕のスマホに掲示板のリンクが送られてくる。

『この人たちにいじめられて困っています。どうか、助けてください』

 A男やB男の名前。
 顔写真や学校名。
 住所や親の職業。
 その下に、無数のコメントが並んでいる。

『C男の制裁完了』
『よくやった』
『次はD子だな』

 さらに、クラス名簿が張りつけられた。

『クラス名簿ktkr』
『いじめられっ子ってこいつじゃね?』
 続いて書き込まれたのは、僕の個人情報。
 自分自身の顔写真を見て固まっている間にも、新しい書き込みが増えていく。

『誰かいける人~』
『近所だから突撃するわ』
『配信よろ』

 直後、玄関のチャイムが鳴った。