「頑張ってこい。俺も、ちゃんと全部終わらせる」


「はい…」


涙がこぼれる。
泣きたくなかったのに。

これは、別れなんかじゃないんだよね?



「必ず、迎えに行く」

「……っ」


先生は私の心を見透かしているかのように、欲しい言葉をくれる。
とめどなく、涙が溢れてくる。


ちゃんと先生の隣にいて相応しい女性になれるように頑張るって、決めたんだ。

目の前の事を、今は一生懸命やることしかできないけれど。



「せん、せ……私、」


頑張るからって声が嗚咽で出てこなかった。


「うん、分かってるよ。奈桜はちゃんと、頑張ってくるって」


髪を撫でて、そのまま優しく抱きしめてくれる。




「元気で」

「先生も…」


離れたくない!!!

このままどこか二人で遠くへ逃げて、誰も知らない場所で静かに暮らしたい。



───おとぎ話だったら、そんな風になっていたのかな。

ふと、そんなことを思う。

でも——



「奈桜」



優しく名前を呼ばれる。

現実に引き戻されるみたいに、顔を上げた。

先生が、少しだけ困ったように笑う。


「そんな顔すんな」

そっと、涙を拭われる。


「また会えるの、楽しみにしてるから」



その言い方が、優しくてずるい。


「……うん」


うまく笑えないまま、頷く。

先生が、少しだけ近づく。

さっきよりも、ずっと近い距離。




周りのざわめきが、遠くなる。




「奈桜」


もう一度、名前を呼ばれる。

その声だけで、胸がいっぱいになる。


「約束しただろ」


低くて、まっすぐな声。


「迎えに行くって」


涙が、また溢れる。


「だから——」


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