「奈桜の事、何より大切だと思ってる」


「俺の隣にずっと居て欲しい。
だからこそ、今は離れるべきだ」



「…先生、ズルすぎる」



繋いだ手に力を込める。

そんな事言われたら……───

もう、ワガママ言えない。


「…本当はこんな形で言うつもりじゃなかったんだ」



先生の表情が苦く歪む。



「もっと、ちゃんと順番守って…全部片付けてから、奈桜と向き合うつもりだったのに」



胸がきゅっとなる。



「急に留学することになって、正直焦った」


「…私もだよ」


「このまま、何も言わずに行かせたら後悔するって思って…って、もう順番も何もぐちゃぐちゃだけど…」


自嘲するように笑う。


「…ごめんなさい」


思わず、こぼれる。
こんな気持ちで言わせたかったわけじゃないの。

先生はすぐに首を横に振った。



「奈桜が謝ることじゃない」


「今日会えて、良かった…」


本当に、良かった。
先生はまた私をぎゅっと抱き寄せて、

「…ありがとう」

小さく呟いた。

夕焼けが、ほとんど消えていく。
夜がくる。
終わりの時間が近づいている。

それでも、

繋いだ手だけは、最後まで離れなかった。


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