スマホなくした!

 やばいやばい……!
 中学校に着いたとたん、オレは青ざめた。
 授業が始まる前にスマホをマナーモードにしようとして、ポケットに手を入れたのに、そこにあるはずのスマホが……ない!
 カバンをひっくり返しても、見つからなかった。家を出るときには絶対あったはず。だって途中で時間を確認したんだから。
 登校中に落としたのかも。
 最近、両親にお願いしまくって、やっと買ってもらったのに……。落としたらもう買ってもらえないかもしれない。高かったから、母さんにも父さんにも怒られるに違いない。

 スマホがないせいで、一日中授業に身に入らない。
 オレは終業のチャイムと同時に学校を飛び出した。
 朝通った道を隈なく探す。もしかして、道端に落ちているかも、と期待しながら。だけど、非情にも、スマホはどこにもなかった。

 絶望しながら家に帰ると、在宅で仕事をしていた父さんが意外なことを言った。
「ハルト、お前のスマホからメール来てたぞ」
「え? なんで?」
「お前、スマホ落としただろう? 親切な人が拾って、電話帳から父さんに連絡してくれたぞ」
 父さんに来たメールを読むと、××駅の改札にあるロッカーに、拾ったスマホを入れてくれているんだって! ロッカーを開く暗証番号まで教えてくれている。
「よかったぁ……! 朝から探してたんだ。もう戻って来ないかと思った」
 憂鬱だった気持ちが、いっきに晴れる。
 オレは、自転車を力いっぱい漕いで、××駅へと向かった。

 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。ガチャ。
 四桁の暗証番号を入れると、ロッカーの鍵が開いた。
 中には、見覚えのあるスマホが一つ。スマホの待ち受けも、オレが設定した画面だ。暗証番号を入れてロックを外し、写真のデータやSNSなどを確認する。うん、特に変わりはない。
 父さんに送ったメッセージも確認できた。ついでに『スマホあった!』と父さんにメッセージを送る。
 ほんとによかった。世の中には親切な人がいるもんだ。
 オレは親切な拾い主に心から感謝し、自分もそんな人間になろうと誓った。


⭐︎解説⭐︎
 ハルトのスマホには暗証番号がかけてあるのに、なぜ拾った人はハルトの父に連絡できたのだろう。警察に届けなかったのはなぜ? スマホは盗まれなかったけれど、個人情報やデータは盗まれてない? 戻ってきたスマホは、本当に全て元のままと言えるだろうか。