桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜

――そんなことを、思い出した。


寝返りを打つと、肩の力が抜けた。

「……ふぅ」

明日、ちゃんと颯太と話そう。

そう思いながら、ゆっくり目を閉じた。


翌日。

やっぱり、朝は颯太に会えなかったし、
家の中では避けられている気がする。

だから――放課後、サッカー部をのぞきに行くことにした。

来るな、とは言われたけど……。

グラウンドには、ボールを蹴る乾いた音と掛け声が響いている。
スパイクが土を蹴る音が、リズムみたいに重なっていく。

白いラインの引かれたコートの中を、部員たちが全力で走り回っていた。

その中に、すぐ颯太を見つける。

颯太はボールを追いながら、軽やかにフィールドを駆けていた。

 
……小さい頃の颯太が、重なる。


泣き虫で、私の後ろをちょこちょこついてきていた、小さな弟。

本当、いつの間にこんなに大きくなったんだろう。


ぼんやり見ていると――

颯太がふと顔を上げた。

目が合う。

その瞬間。

颯太の動きが止まった。

ほんの一瞬、目を見開く。

次の一歩で、足がもつれる。

「っ」

バランスを崩して、そのまま前につんのめった。

「!!」

思わず声が出そうになる。


「おい! 颯太、どこ見てんだ!」

グラウンドから顧問の先生の声が飛んだ。

 
「っ……颯太……」

その場から一歩踏み出しかける。

でも……

ここにいたら、邪魔になる。


私はそのまま、静かにその場を離れた。

颯太は、こちらを見なかった。

――まるで、見ないようにしているみたいに。


「おい颯太! 集中しろ!」


グラウンドに再び顧問の声が響く。


……私は、振り返らないまま歩いた。