桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜

ひと段落ついたところで、颯太の様子が気になって二階へ向かった。

部屋の前に立ち、軽くノックする。

「颯太ー?」

返事はない。

もう一度呼びかけながら、そっとドアを開けた。

部屋の中は暗い。

目を凝らすと、ベッドの上に寝転ぶ颯太の姿が見えた。
 

「……寝てる?」


「……なに」

不機嫌そうな声が返ってくる。


「! 起きてたんだ! あのさ――」

「……用ないなら出てけよ」

一瞬、言葉に詰まる。
でも、そのまま言い返した。

「っ用がないっていうか、もうすぐご飯だよ?」

「……いらない」

即答だった。

「そんな、今日も部活頑張ってたし、お腹空いてるでしょ?」

「いらないもんはいらない。……ていうか、人の部活まで勝手に来んなよ」

さすがに少しムッとする。

「しょうがないでしょ。部活動見学してたんだから。……今日の颯太、なんか変だよ」

一瞬、空気が張り詰めた気がした。

でも、私は気にせず続ける。


「……なによ。昔はもっと可愛かったのに」


「っ! 変なのは姉ちゃんの方だろ!!」


「!!」

突然の大声に、思わず肩が跳ねた。

颯太がベッドの上で上半身を起こす。

その時。
 

「おい、颯太」


背後から声がした。

振り向くと、ドアのところに隼人が立っている。


「……こいつに絡みすぎ」


颯太がベッドの上から隼人を睨む。


「っ、私は大丈夫だからっ」


二人の視線が、ぶつかる。


「ふーん……」


颯太が小さく鼻で笑った。

「姉ちゃんのことになると、ずいぶん心配するんだな」

「は?」

二人の間の空気が、一気に張り詰める。

「っ隼人! とりあえず下行こっ! カレーできてる!」

私は隼人の背中を押すようにして、部屋の外へ出る。

その途中で振り返った。


「颯太、お腹空いたら温めて食べといてね! あんたの分残しとくから!」


バタン、とドアが閉まる。

一瞬の静寂のあと、
ドアの向こうで、何かが小さく軋んだ。

「……姉ちゃんのバカヤロウ」