桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜

遠くで、くぐもった雷が鳴る。

その時、廊下に敷かれた細長いラグに、つま先が引っかかった。

「わっ」

体が前に傾く。

隼人にぶつかった。

バランスを崩して、そのまま——

「っ」

二人そろって床に倒れ込む。


……気づけば。

私が、隼人の上にいた。

スマホが横に転がり、
その光が床と、隼人の横顔をかすかに照らしている。

「っ……」

「……」

思わず、二人とも動きを止めた。

すぐ目の前に、隼人の顔。

そのまま、なぜか目が逸らせない。

隼人も動かない。
ただ、静かにこちらを見ている。

ふっと、記憶がよぎる。


酔った私。
隼人に絡んで、
勢いのまま倒れ込んで。


……ゲロ事件。


全部、繋がった。


「……あ」


急に恥ずかしくなって、顔が熱くなる。

あんなことをしたのに、
隼人は何も言わなかった。

ただ、黙っていてくれた。


「……どうした?」


すぐ下で、隼人の声がした。
さっきより少しやわらいで聞こえる。

ふと、隼人の左腕に目がいく。

私を支えている腕。

その手首に、スマホの光がかすかに当たっている。
手首の少し上、前腕に細い傷跡が残っていた。


……あの夏の、傷だ。


胸が、少しだけざわつく。
 

そうだ、私、あの時——。


近すぎる距離のまま、私は口を開いた。


「ねぇ、隼人——」


ガチャ。

玄関のドアが開く音。 


轟音が、すぐ近くで鳴った。


そこに立っていたのはーー


「……」


颯太だった。


表情のない顔で、こちらを見ている。


「……なにしてんの」


颯太の栗色の髪から、雫がぽたりと床に落ちた。