桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜

——それでも。
逸らしたはずの視線が、私の髪の先で止まる。


髪濡れてるの、気づいてるんだ……。 ゴロ……

遠くで雷が鳴った。

雷の音に、私は反射的に隼人を見る。


……昔。

雷が鳴るたび、
隼人は黙って部屋の隅に座っていた。


——あっち行け。


そう言われても、私は隣から動かなかった。


雨音が、急に強くなる。

窓ガラスを叩く音。

ゴロッ——

さっきより近い雷。

次の瞬間。

パチン。

リビングの灯りが落ちた。

一瞬、何も見えない。

暗闇の中で、私は隼人の方を見る。


「……隼人?」


暗くて、表情は見えない。


「平気」


低い声が返ってきた。

稲妻の光が、窓の外を白く染めた。

一瞬だけ、隼人の横顔が浮かび上がる。

すっと通った鼻筋と、伏せ気味の睫毛。

光の中で、その輪郭だけがくっきり浮かぶ。


「……ブレーカー、見てくるね」


そう言って、一歩踏み出しかけたとき。


「待て」


暗闇に声が落ちた。

ほぼ同時に腕を軽く引かれる。

強い力じゃない。
ただ、行くなと止めるような動き。

気づけば、さっきより距離が近い。 


「……俺が行く」 


そう言って、隼人は私の腕からそっと手を離した。私はポケットからスマホを取り出す。

画面を点け、懐中電灯をオンにすると、白い光が足元を照らした。

「ブレーカー、洗面所だったよね」

「多分」

隼人が短く答える。

私たちは並んでリビングを出た。

廊下は、さっきよりずっと暗かった。

外の雨音も強くなっている。

スマホの小さな光だけが、床を細く照らしていた。