桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜

その人は部員たちにタオルを配りながら、
一瞬だけ俊兄の方に目を向けた。

……そういえば。

あの時、あの人――
何か言いかけていた。

結局、聞けないままだったけど。

ぼんやりその姿を見ていると、
ふと頭の中で別のものがよぎる。

俊兄の部屋にあった――
小花柄の封筒。

……なんでだろう。

全然関係ないはずなのに、
なぜか少しだけ気になった。

「りあ?」

俊兄の声で、はっとする。

「!……あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」

「日射病じゃないよな?大丈夫か?」

俊兄は少しだけ眉を寄せた。

「うん、大丈夫」

私がそう言うと、俊兄は小さくうなずく。

「そっか。……じゃあ、そろそろ戻るな」

体育館の方へ視線を向けて、俊兄は踵を返した。

その背中を見送りながら、
芽衣がまた小さな手帳に何かを書き込む。


「桐生俊……三年。剣道部主将。品行方正。女子生徒の憧れ。妹にはわりと過保護。そして……」


芽衣は、じっと隣の瑞稀を見る。

「……」

「な、なによ」

瑞稀が少し警戒したように言う。

芽衣は小さく首を振った。

「……別に」

その様子を見て、小さく苦笑する。