桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜

「桐生颯太……一年。サッカー部次期エース。反抗期。姉に素直になれない、と」


振り返ると、芽衣が小さな茶色い手帳に何かを書き込んでいた。

「ちょっと芽衣!」

瑞稀が慌てて止める。

颯太はじっと、私の背後にいる芽衣を見ている。
瑞稀はその視線に気づくと、取り繕うように笑った。

「はは……。颯太くん、久しぶりだね?」

瑞稀は小学生の頃、何度か桐生家に遊びに来たことがある。
だから、颯太とも面識はあるはずなんだけど。

颯太は少し考えるようにして、

「……誰だっけ」

と、言った。

瑞稀の顔がぴくっと引きつる。

「っ後藤です! 後藤 瑞稀!」

「ああ」

颯太は思い出したようにうなずく。

「姉ちゃんの友達の……加藤さん」

「いや、今ちゃんと苗字名乗ったよね、私?」

瑞稀が即座にツッコむ。

「瑞稀っ、ごめん」

颯太の代わりに謝ると、今度は芽衣の声が飛んできた。

「りあが謝ることじゃない」

……まぁ、それはそうなんだけど。


「おーい颯太!」

グラウンドの方から声がする。

颯太はそちらを振り返り、

「じゃ」

と一言だけ言って、コートへ戻っていった。

そのそっけない背中を見送りながら、
瑞稀が肩をすくめた。

「相変わらずだねー、あの子。あんな可愛い顔して、ピリ辛なんだから」

芽衣がぽつりと言う。


「……かまってちゃん」


「え?」

私は芽衣を見るが、芽衣は小さく首を振った。

「なんでもない」

それから、静かに続ける。

「……次、行こう」

こうして私たちは、また校舎の方へ歩き出した。